37-6.風邪菌の対処法は
「ちょっと、祐介くん!」
「なんですか?」
「に、逃げるって、どうするのよ!」
「いや、そのままの意味ですよ」
だからこうして、森を駆けている。
うしろから牡丹がぴったりと追跡してきた。
彼女のエコーの反響が、常に木霊している。
「あっはっはー! もしかして牧野さん、わたしにビビっちゃいましたかあっ!」
「あぁ、すげえ怖い!」
「な、なんか馬鹿にされてるみたいですね! いいですよ、逃がしませんからね!」
「うわあ、こわいよー」
おれたちのやり取りを見ながら、トワがため息をついた。
「しかしお兄ちゃまよ。実際問題、あれは振り切れそうにないのう」
「いいんだよ。本当に逃げようなんて思っちゃいない」
「じゃあ、どうするつもりかえ?」
「……ここは、『ハント』の常とう手段を使わせてもらう」
おれは振り返ると、牡丹がついてきているのを確認する。
……そろそろか。
「おまえたちのデータは見た! 世界ランク1000位以内はすごいな!」
「ま、まあ、あのくらい楽勝ですよ!」
「でも、おまえたちは普段、『ハント』はやってないんだってな?」
「そりゃ、こんなの面白くないからですよ! 『バーサス』のほうが楽しいじゃないですか!」
――『バーサス』。
それはランク戦のテーマの一つで、ハンター同士がスキルを使って一対一のバトルを繰り広げる競技だ。
特別なダンジョンでしか実現がしないもので、他に比べて人気が高い。
「そうだよなあ。でも、こっちはこっちで楽しみ方はあるんだぞ」
「知った口を聞きますね! その未経験者に追い詰められてるじゃないですか!」
いい感じに熱くなってるな。
そのままのテンションを維持してくれれば……。
そして森を出た瞬間だった。
「いた!」
そこにいたのは、特製の巨大な出刃包丁を持ってモンスターと戦う集団。
チーム【迷宮美食探求会】だ。
「なんだ?」
「あれは、チーム【牧野】?」
彼らは不思議そうにこちらを見ている。
おれたちはそちらへと駆けて行った。
「あ、すみませーん」
「な、なんだ?」
「申し訳ないんですけど……」
おれはさわやかな笑顔を浮かべた。
「いまから張りつかせていただきます」
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