37-2.※これはフィクションです


 近くのファミレスで、もそもそとミートドリアをつつく。


 あー。

 やる気でない……。


「いいじゃないの。眠子ちゃんだって、もう18歳でしょ?」


「だって、だって、あいつ、ひとりじゃなにもできないし、変なやつに騙されてるんじゃないかって……」


「大丈夫よ。あの子はしっかりしてるわ」


「でも、ほんと、小さいころからそういうの全然なかったんですよ?」


「むしろよかったじゃない。あんたは喜んであげなきゃ」


「でも、いきなり事後報告されても、こう、感情が追いつかないんですよ!」


「女の子ってそういうものよ」


「相談くらいしてくれたっていいじゃないですか! 主任は驚かないんですか!?」


「だってわたし、前から聞いてたし……」


「え?」


「あっ」


 やば、というように口をふさぐ。


「……しゅ、主任?」


「あ、いや、その、ほら、同性だから話せること、あるじゃない?」


「な、なんで言わなかったんですか?」


「ちょっと、あんたには刺激が強すぎるかなーって……」


「…………」


 おれはテーブルに突っ伏した。


「もうやだあああああああああああああああ」


 トワがやれやれとハンバーグに刺したナイフを置く。


「こやつ、案外、子煩悩になりそうじゃな。のう?」


 話を振られ、姫乃さんがぎくりとなる。


「え、あ、いや、わ、わたしは別に、そういうのはまだ、ねえ?」


「くふふ。そう言いながら発情しておるわ」


「してません!」


 公共の場でそういうこと言うのはやめなさい。


「……あら。もうそろそろ行かなきゃ」


「あ、そうですね」


 決勝戦の開始三十分前。

 おれたちはトーナメント会場に向かった。



決勝戦


 チーム【迷宮美食探求会】

 チーム【牧野】

 チーム【どさんこ+】

 チーム【黒魔術倶楽部】

 チーム【ザ・利根!】



「結局、知り合いは利根さんのところと、佐藤さんのところね」


「そうですね。どっちも強敵ですけど、あとの二つもなかなかですよ」


「この【美食会】のところは映像を見たけど、こっちの【黒魔術】のほうはどんなところか知らないのよね」


「あ、それなら……」


 と、向こうに例の【黒魔術倶楽部】がいた。

 三人とも、顔からすっぽりとマントをかぶっている。


「あ、怪しいわね……」


「まあ、確かに見た目はそうなんですけど……」


 すると、その一人がこっちを見た。


「牧野どのではござらぬか!」


「あ、どうもどうも。お久しぶりです」


 そのメンバーが、親しげな感じで近づいてくる。


「あのときのレイド戦以来ですなあ」


「みなさんも、まだやってたんですね」


「当たり前でござるよ。拙者たち、ダンジョンだけが取り柄ですからなあ」


「アハハ。今日はお手柔らかにー」


 姫乃さんが慌てて聞いてくる。


「え、あんた知り合いなの!?」


「えぇ。現役のころ、何度かいっしょに潜ったことがあるんですよ」


 その一人、リーダーの若松さんがうなった。


「ぬぬっ! これは……」


 三人でトワを取り囲むと、じろじろと見回している。


『黒髪美幼女萌え~~~~っ!』


「うぎゃ、な、なんじゃ!?」


「うっほーっ! このぷにぷにの二の腕、たまりませんぞおおおおおおお」


「ちょ、やめ、放すのじゃ……!」


 あ、そうだった。


「このひとたち、割とガチでそういうタイプだから気をつけろよ」


「先に言うべきじゃろうがあ――――っ!」


 そのとき、アナウンスが鳴った。


『それでは決勝戦、スタンバイに入ってください!』


 転移装置が起動する。

 参加者は順々に、ダンジョンへと転移していった。


「それでは牧野どの! ご健闘を!」


「拙者どもが勝った暁には、その黒髪美幼女のぺろぺろを所望いたす!」


「いや、それはさすがにまずいです」


 そう言って、彼らはダンジョンへと消えていった。


「よ、汚された、もう嫌じゃあ」


「……まあ、災難だったな」


 さてと、切り替えていきますかあ。

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