35-2.反撃


 店長がスキルを発動した。


 ――探知スキル『マナ・ペイント』

   +

 ――補助スキル『シェア・ビジョン』


 魔力が二体のモンスターを包み、その魔素の流れを視覚的に浮き上がらせる。

 より強い魔素を蓄えている部分は、どちらも額の部分だ。


「ハイドさーん」


 向こうの丘の上から、ハイドがライフルを構える。


 ――攻撃スキル『弩弓弾』発動


 ズドン、と重い銃声とともに、攻撃力を強化された銃弾が飛ぶ。


 それはタイタンの額に命中すると、やつの身体をのけ反らせた。


「やったの!?」


「いえ、あれは……」


 ハイドがチッと舌打ちする。

 彼の銃弾は表皮を削ることはできなかった。


「こっちだ!」


 タイタンが、ハイドに狙いを定めた。

 おれはすかさずスキルでカバーする。


 ――幻覚スキル『ミラージュ』発動


 ハイドの姿を持つ無数のダミーを空気中に映し出す。

 タイタンの攻撃は、その一体に吸われた。


 その隙に、おれたちは洞窟の中に身を隠す。


「どうだ?」


「いや、あれくらいでは無理だ」


「あれでも最大出力なんだがな」


 あの部分にモンスター核があるのだが、分厚い表皮のせいで攻撃は届かない。

 あれは反属性の効果で防御力をダウンさせるしかないだろう。


 いまある攻略法としては、衝撃でエレファントにぶつけることだ。

 よほどうまく位置取りを操作しなければ難しいが、四足歩行のエレファントを銃撃で倒すことこそ不可能だ。


「やはり、まずはエレファントの脚を止めよう」


「具体的には?」


「脚を一本だけ潰せばいい。そしたら、エレファントは動けなくなる。それに向かって、タイタンを倒す」


「……簡単に言ってくれるな。それができないから苦労してるんだろう」


 まあ、確かにそうなんだけど。


「とにかく、役割を分担しましょう。まずおれが『ミラージュ』で敵の行動を抑えます。その間に、それぞれ……」


 説明を終え、おれたちは洞窟から出た。


「よーし、行くわよ!」


「おーっ」


 姫乃さんとトワが、エレファントのほうへと回り込む。

 まずエレファントの脚を折るのは姫乃さんの役割だ。

 というか、攻撃力的に彼女しかできない。

 トワは彼女に付き添い、回復を担当する。


 エレファントの視界の外で、姫乃さんがスキルを発動する。


 ――斬撃スキル『グランドスラッシュ』!


 トーレントを一撃で仕留めた斬撃が、エレファントに襲いかかる。


 ――ギギーンッ!


 しかし桁違いの防御力に、それは弾かれる。


「祐介くん!」


「離れて! おれの幻覚で止めている間に、繰り返してください!」


 すかさず『ミラージュ』で幻影を生み出す。

 エレファントは鼻を振り上げると、その一体を攻撃した。


 そして、姫乃さんの第二撃目は、同じ個所を攻撃した。

 しかし表皮がわずかに削れるだけで、その攻撃は通じない。


「おい、効いていないぞ」


「くそ、なにか楔になるようなものがあれば……」


 と、そのときだった。


『パオオオオオオオオオオン』


 非常に象チックな鳴き声とともに、エレファントが鼻を振り上げた。

 魔力の流れが、その鼻に集中する。


「……まずい、ウルトだ!」


 鼻の先から、赤いマグマが噴き出した。


 それは宙に噴き上げると、辺り一帯に降り注いだ。


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