35-3.憎まれ口も
「……あれ?」
暗闇の中、おれはその違和感に気づいた。
おれたちは、まだダンジョンの中にいる。
てっきり、強制エスケープで戻されたと思ったけど……。
でも、ここはどこだ?
土の匂いに囲まれている。
ハイドが不思議そうに手をつく。
「これは、土豪か?」
すると、隣から声がした。
「あー、もー。牧やん。なにしてんのさー」
「え?」
見ると、眠子が欠伸をしていた。
「ハアー。せっかく楽勝だと思ってたのになー」
「え、おまえ、どうして?」
「牧やんたちを助けてあげたのー。感謝してよねー」
「いや、そもそも、戻ったんじゃなかったのか?」
「えー。違うよー。寧々ちんがやるっていうから、ずっと隠れてたよー」
「ずっと?」
「ずっと」
そこでふと、思い至った。
ここにいるのは、おれとハイドと店長だけだ。
「ていうか、姫乃さんは!?」
「あー。大丈夫だよー」
眠子がパチンと指を鳴らす。
すると周囲の土が剥がれていって、外の風景が現れた。
向こうには、姫乃さんとトワがいた。
美雪ちゃんの『ワイド・バウンド』で、エレファントの攻撃から守られている。
「あ、マキ兄ぃー。大丈夫だったー?」
ものすごく余裕のある感じだった。
「ど、どうして?」
「えー。だってさー。こんなところで負けとか、マキ兄ダサすぎじゃーん。仕方ないから手伝ってあげよーって思ったわけ」
「…………」
……うーん。
もうちょっと素直に言ってくれたら、ありがとうも言いやすいんだけど。
あれ。ということは、寧々も?
でも、どこに?
と、エレファントの頭の上に人影があった。
あれ、寧々?
彼女は糸を構えながら、鋭い視線でエレファントを睨んでいた。
「……よし」
と、次の瞬間、彼女はエレファントの目に向かってナイフを投げた。
それが突き刺さると、エレファントがその痛みに悶える。
『パオオオオオオオオオオン』
寧々は飛び降りると、こちらへと走ってきた。
「おら、倒れるぞ!」
「え?」
ぐらり、とエレファントの身体が傾いた。
――ズズゥーンッ!
地響きとともに、土煙が襲ってきた。
すかさず眠子と美雪ちゃんが防ぐ。
エレファントが転がったままもがいている。
しかし、一向に起き上がれる気配がない。
よく見ると、その身体中を複雑に縛る糸が見えた。
「な、なにしたんだよ」
「ハッハーッ。特製の耐久特化の糸で縛ってやったんだよ。もがけばもがくほど、脚の一本に体重が集中するようにな」
「マジか……」
寧々は自分の頭を、人差し指でトントンと突く。
「ただ力づくでやりゃいいってもんじゃねえんだよ。こっち使いな、こっちをよ」
「……あぁ、もう。減らず口ばっかだな」
でも、助かった。
これでなんとか……。
――ズゥーン!
地鳴りに目を向けると、タイタンがこちらに歩を進めている。
おれはハイドと目を合わせると、うなずき合った。
「今度は、おれたちの仕事だな」
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