34-5.どうするの!


「おら、捕まえた!」


 ハイドはつかさの襟を掴むと、そのまま宙ぶらりんに持ち上げる。


「は、離してくださいよーっ!」


「……ったく、手間とらせやがって。おまえ、自分のウルトがどんだけ迷惑なもんかわかってねえのか!」


「で、でもハイドさん、わたしに狩らせてくれないじゃないですかあーっ!」


「あとでやらせてやるっつってんだろ!」


「嘘だあー! この前も、そう言ってすぐ帰ったじゃないですかあー!」


 店長がパンパンと手を叩く。


「はいはい、ふたりとも。とにかく、はやく場所を確保しましょう。このままだと、またモンスターたちに囲まれますよ」


 鶴の一声に、ふたりは静かになる。


「つかさちゃん。きみのウルトは、きみが思ってるよりずっと危ないもんだよ。きみが危ない目に遭うのは、おれたちも見たくないんだ」


「……はい」


「ハイドさんも、ちゃんと約束は守りましょう。今回だって、半分はハイドさんの責任ですよ」


「……チッ」


 店長がふたりの手を掴む。


「はい、仲直りの握手です」


 ぐい、ぎゅー。


 無理やり手をつながされて、ハイドはじろりと睨んだ。


「……おい、店長。さりげなく自分の責任を帳消しにしようとしていないか」


「さ、さあ。なんのことでしょうかねえ」


「おい、こっちを向け」


 そのとき、つかさが、つないだ手をぐいぐい引っ張った。


「ハイドさん!」


「……今度はなんだ?」


 すると、つかさが向こうを指さした。


「あれ、あれ!」


「あぁ?」


 それを見て、ハイドはにやりと口元を歪めた。


「……ほう」



 …………

 ……

 …



「ねえ、祐介くん!」


「のう、お兄ちゃま!」


「どうするの!?」


「どうするのかえ!?」


「うるさあ――――い!」


 おれが叫ぶと、ふたりがのけ反った。


「きゃっ!?」


「のうっ!?」

 

「ちょっと考えてるんだから、静かにしててくださいよ!」


 どうする?

 どうにかして、美雪ちゃんにバリアを解除させなければいけない。


 でも、どうやって?


「マキ兄は昔から、こういう手に弱いもんねえ。ほら、はやくしないとタイムリミット来ちゃうよー」


「くそ……」


 でも、タイムリミットまで待つ気はないだろう。


 寧々たちが戻ってきたら、あとは悠々とツチカゲを仕留めればいい話だ。

 それまでに、この状況を打破しなければいけない。


「……なにか、手はないの?」


「ないことはないんですけど……」


 眠子のように土の中から中に移動できない以上、できることは二つ。


「美雪ちゃんが自分からスキルを解除するように仕向けるか、あるいはこの盾を動かすか」


「盾を動かす?」


「このバリアは、美雪ちゃんの盾を起点にして発動しています。つまり、この盾の向きを変えれば、バリアもずれる。それで洞窟の入口に隙間ができれば……」


「よし、やりましょう!」


「え、やるってなにを?」


 言いながら、袖をまくる。


「みんなで押すのよ!」


「…………」


 このひと、ほんとめげねえなあ。


 ……まあ、一応はやってみるか。

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