34-3.駆け回る爆弾


 森を抜け、洞窟を渡り、次のエリアへと駆ける。

 そこでもやはり、他のモンスターが忽然と消えていた。


「……どういうことだ」


 おれは立ち止まった。

 そして虚空に呼びかける。


「おい、寧々! いるだろ!」


「祐介くん!?」


「こら、お兄ちゃま。いまは敵であろう。答えるわけが……」


 すると、うしろの空間が揺れた。

 寧々が姿を現すと、こちらに歩み寄ってくる。


「なんだ?」


「えぇ!?」


 姫乃さんたちのリアクションに、寧々は面倒くさそうに頭をかいた。


「別に、チーム同士で話し合っちゃいけないなんてルールはねえよ」


「で、でも……」


「ハンター同士の攻撃は禁止されてるので、このルールではいくつかのチームが共闘することもあります」


 それよりも、この状況の把握が先だ。


「おまえも気づいてるだろ。どう思う?」


「…………」


 寧々はため息をついた。


「ま、この妙にポイントを獲りまくってる連中の仕業だろうな」


「見当はつくか?」


「さっぱりだな。こんなの、経験したことねえよ」


「どうする?」


 腕章の画面を起動し、チーム【並盛つゆだく】の経過を見る。


 現在、87ポイント。

 先ほどからさらにポイントを重ねたようだが、いまはカウントが止まっている。


「……もし仮に、こいつらがエピック以外のモンスターをすべて狩るつもりなら、わたしたちもやばい」


 ノーマルモンスターは10ポイント以下。

 レアモンスターは10~30ポイント。


 エピックに比べれば些細なものだが、塵も積もればなんとやら。

 200点を確保する【小池屋】だって、下手をすれば抜かれるかもしれない。


「……あー、くそ。わかったよ。わたしが様子を見てきてやる」


「いいのか?」


「そのつもりで呼んだんだろうが。ただし、そいつらの手口がわかったら、その攻略はおまえらがやれよ」


「……その約束はできない」


「ハッ。切羽詰まってるのはそっちのほうだろ」


 おれの肩を軽く小突いた。


「ま、いいか。おまえたちは絶対に最後のエピックを獲れないからな」


「……どういうことだ?」


「見りゃわかるさ」


 寧々はステルススキルで消えた。

 その気配が、向こうの洞窟へと向かっていく。


「……よし、寧々は追っ払った。それじゃあ、行きますよ」



 …………

 ……

 …



「もう! ハイドさんはほんとにもう! どうせわたしをのけ者にして自分が狩りたいだけに決まってるんですから!」


 つかさはぷんぷん怒りながら、そのエリアを進んでいた。


「だいたい、モンスターハントはみんなで協力してやるのが楽しいんでしょ! なのに、いっつも美味しいところ独り占めなんですから!」


 ふんすと鼻を鳴らすと、メイスを手にして、えいえいおーと振り上げる。


「見ててくださいよ! わたしひとりだってできるんですからね!」


 そのときだった。

 なにかにつまずいて、こけてしまった。


「あいたっ!」


 鼻を押さえながら、つかさは振り返る。

 妙に固い土が盛り上がっている。


 その土が、もこもこと動いた。


「……なに、これ?」


 そっと触れる。

 すると、それはさらにもこもこと動いた。


 ぼこっと顔を出したのは、見たことない少女だった。

 見た感じ、つかさよりちょっと年上くらいである。


「…………」


「…………」


 彼女はぼんやりとこちらを見ていたが、やがて大きな欠伸をする。


「……いま何時ぃー?」


 つかさは慌てて腕時計を見る。


「え、あ、11時過ぎくらいですけど……」


「あー。じゃあ、あと三十分くらいかぁー。……もうちょっと寝てよ」


 そうして、彼女はもこもこと土の中に戻っていった。


 ぽかーん、である。


「……なに、いまの?」


 その瞬間、手元の土がチュインッと弾けた。


 ハッとして見ると、向こうからハイドと店長が走ってきていた。


 ――ドドドドドッ!


 そのうしろには、つかさに狙いを定める大量のモンスターたちが押し寄せてくる。


「くおらあ――――っ! いい加減にしろよ、このくそ犬っころがあ――――っ!」


「あ、やば、見つかった!」


 つかさはハイドたちと反対側のほうへと走り出した。


「だから、おまえじっとしてろぉ―――――っ!」

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