30-7.捜索開始
「では、他に白い服の女に関する情報はありませんか」
「えぇ、目撃情報はこれですべてです」
「ありがとうございました」
おれたちは現代に戻ると、館長に白い服の女に関する情報を求めた。
それはきっちりとファイルに閉じられ、非常に見やすくまとめられている。
まず初めて現れたのが、ちょうど一か月前。
ここの作業員がダンジョンに潜ったとき、その姿を現した。
はじめは数日に一度。
それから徐々に客の前にも現れるようになり、いまでは毎日のように現れるらしい。
そのファイルには、その日時まですべて記入されている。
「…………」
「マキノ、どうした?」
「いや……」
なんだろう、この違和感。
「このファイル、なんか変だ」
「ワット?」
ピーターが、それを手に取ってめくる。
「……よくまとめられてるじゃないか。それに、普通のファイルだろ?」
「まあ、そうなんだけど」
おれは、いま感じたものを言葉にすることができなかった。
「どうしようか」
ピーターが、珍しくおれに意見を求めてくる。
おれは少し考えて、率直な意見を述べた。
「……あれの判断を下すには、また遭遇してみないことにはね」
その言葉に、姫乃さんがぎくりとなる。
「それって、またあれを探すってこと?」
「まあ、そういうことです」
「ね、ねえ。もうやめましょうよ」
おれは首を振った。
「姫乃さん。もしあれが悪戯だとしたら、放ってはおけません。いまのところ被害はありませんが、今後も事故のない保証はないんです」
ピーターに目を向ける。
「とはいっても、いまこのパーティのリーダーはおまえだ。どう思ってる?」
「……フーム」
彼は真剣な表情で考えていた。
「ま、ぼくもやられっぱなしというのは性に合わないな。オーケー。マキノ、きみの気の済むまでつき合おう」
「えぇーっ!?」
姫乃さんが嫌そうに顔をしかめた。
「どうしてふたりとも平気なのよ!?」
「まあ、昔から危ないハントはしてきましたんで。いまさら幽霊で恐がるってのもアレですよね」
「うー。あんたら、ぜったい変よ……」
「あ、姫乃さんは残ってもらっててもいいですよ。おれたちでやっておきますんで」
「い、嫌よ、いやいや! こんなときにひとりでいるなんて、ほんと無理なの!」
そう言って、彼女はそっと腕を取る。
「ぜ、ぜったいに守ってよ」
おれはその様子に、思わず苦笑した。
こんな姫乃さん、会社でもプライベートでもなかなか見られるものじゃないからな。
「まあ、善処します」
ということで、おれたちはあの白い服の女を探すことにした。
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