28-完.やったね、バトルの時間だよ!


「ここだ……」


 おれは魔力の道が途切れた場所で立ち止まる。


 そこは行き止まりだった。

 しかし、宝箱どころかモンスターもいない。


「宝箱はどこにあるの?」


「さあ。お母さんが隠したやつだから、お父さんも知らないらしいし……」


 じっと陽子さんを見る。

 すると彼女はのほほんと笑った。


「あら。どうだったかしらあ」


 おい。


「地面でも掘ったら出てくるのかな」


「でも、あの暗号は?」


「うーん。なにか目印があったけど、モンスターか何かに持っていかれたとか……」


「えー!? じゃあ、ここ片っ端から掘るの?」


 あまり想像したくはないなあ。


「お母さん! なにか思い出さないの?」


「もう、そんなに怒らないでよー」


「誰のせいでこんなことになってるのさ!」


 美雪ちゃんが、ドンッと壁を叩いた。


 ……うーん。

 目印があったとしたら、すでに誰かに持っていかれた可能性も……。


「……って、どうしたの?」


 ふと、美雪ちゃんが壁を忙しなく触っている。


「……ここだけ感触が違うの」


「え?」


「なんか、固くて大きいものが埋まって……」


 その言葉に、ふとおれたちは顔を見合わせる。


「宝箱だ!」


 慌ててその壁を、盾を使って掘っていった。


 ――ガキンッ!


 すぐになにかにぶつかる。

 おれたちは、期待に胸を膨らませながらそれを取り出した。


 ……のだが。


「なに、これ?」


「……石像、かな?」


 それは大きな石を削った彫刻だった。

 翼を生やした悪魔を象ったもので、悲痛な表情を浮かべている。

 精巧な作りで、まるで生きているような錯覚を覚えるほどだ。


「なんでダンジョンにこんなものが?」


「さあ。わたしも始めて見たし……」


 と、その額にハート形の赤い石が埋まっているのに気づいた。


「でもこれ、宝石みたいだよ? 案外、これが宝箱だったりして……」


 美雪ちゃんが、その額の石に触れた瞬間だった。



 ――ぞくり。



 背筋に冷たいものが走った。

 同時に、先ほど感じた異質な魔力が周囲に充満しているのに気づく。


「――美雪ちゃん、離れて!」


「え?」


 石像の目が光った。

 同時に、その身体が微かに動く。


 その額の石から、大きな魔力が放出された。

 それはエネルギー波となり、周囲に強い旋風を巻き起こす。


 ――強化スキル『アクセル』発動!


 瞬発力と移動力を飛躍的に上げるスキル。

 おれは美雪ちゃんをこちらに抱き寄せると、彼女の盾でその攻撃を受け止めた。


 ――ズババンッ!


 美雪ちゃんの盾が、攻撃をことごとく弾いていく。

 しかしその風圧に押されて、おれたちは吹き飛ばされた。


「……くそ!」


 攻撃が収まると、おれは起き上がった。

 そして眼前のを見据える。



 ――ガーゴイル。



 石像の姿をした魔獣。

 そいつはじろりとこちらを睨むと、威嚇体勢に入った。

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