28-6.ファイア的な?


「マキ兄、盾のうしろに!」


 敵は巨大なハリネズミのようなモンスター。

 美雪ちゃんが正面から爪の攻撃を受け止めた。


 ――補助スキル『フラッシュ』発動!


 盾の表面から、眩い閃光が走る。

 それに目をやられたハリネズミが、一瞬、身体を硬直させる。


 その隙に、美雪ちゃんはその側頭部を盾で殴りつけた。

 横に倒し、体重をかけて押さえつける。


「抑えたよ!」


「了解!」


 おれは剣を構えると、ハリネズミの背後に回った。

 その背中の鋭い棘の海から、きらりと輝く青い石を発見する。


「モンスター核を発見した! 破壊する!」


 それに刃を突き立てた。

 同時に、ハリネズミが絶叫する。


 そのとき、やつの身体に異変が起こった。

 ぶるぶると痙攣すると、その背中の針が一斉に逆立った。


 そして次の瞬間、その針が一斉に飛び散った。


「やば……っ!」


 慌てて急所を腕でかばった。

 ――が、いつまで経っても針が飛んでこない。


「……あれ?」


 うっすらを目を開けると、その無数の針が宙で停止している。

 よく目を凝らすと、透明な青いバリアがおれの周囲を包んでいた。


「……これ、美雪ちゃん?」


 彼女の盾から、そのバリアが発生していた。

 美雪ちゃんはそれを解除すると、じろっと睨んでくる。


「……マキ兄。油断しすぎ」


 うっ。


「はやく次のフロア行くよ」


 言いながら、彼女は下への階段を降りて行った。


「…………」


 そのうしろ姿を見ていると、ぱちぱちと小さな拍手が聞こえた。


「あらあら。二人とも息がぴったりねえ。出番がなくて退屈だわあ」


 ……うーん。

 この両極端な感じが、余計に胃を痛くする。


 おれはため息をつくと、美雪ちゃんを追って階段を降りていった。


「……ていうか今日の美雪ちゃん、なんか機嫌が悪くないですか?」


「あら。それはそうよ。お店のピンチなんだもの」


 あんたがそれを言うのか。


「いや、おれも最初はそう思ってたんですけどね。なんか、それとはちょっと雰囲気が違うなって……」


「…………」


 すると彼女は、可笑しそうに笑う。


「やだ、妬いてるのよう」


「はあ?」


 妬いてる?


「誰に?」


「さあねえ」


 そのとき、下から声がした。


「マキ兄! はやく探知して!」


「み、美雪ちゃん! あんまり大声だすとモンスターに気づかれるでしょ」


 おれは慌てて、写真を取り出した。


 ――追跡スキル『トレーサー』発動


 と、視界に反応があった。

 微弱な魔力の残り香が、奥のほうへと続いている。


「……あった」


「え、ほんと!?」


「あぁ、これを追っていけば……」


 でも、なんだ。

 この奇妙な違和感は……。


「……どうしたの?」


「いや、なんでもない。……行こう」


 おれたちは前方を警戒しながら、ゆっくりと進んでいった。

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