28-3.トレジャーハンティング
ダンジョンには、モンスターの他に宝箱というものが存在する。
「そういえば、会社にダンジョンができたときにもあったわね」
「そうですね。姫乃さんがキッチン用品を見つけたやつです」
最近はあれでつくった料理、食べさせてもらってないなあ。
今度、頼んだらつくってくれるかな。
「ここにもあるの?」
「はい。まあ、正確にはあったというのが正しいですけど」
「じゃあ、いまはないってこと?」
「モンスターと違って、宝箱は
おれが現役のころ、すでにこのダンジョンの宝箱はすべて発見されたって聞いたんだけど。
「……で、宝箱って?」
「お父さんたちがもしものときのために隠してたのがあるらしいの! それを換金すれば、なんとか……」
「じゃあ、取りに行けばいいじゃん」
「それが……」
美雪ちゃんが、微妙な顔で陽子さんを見る。
「それがねー。このダンジョンを買い取ってすぐのことじゃない? 詳しい場所を忘れちゃってー」
おい。
それで川島さんがこうなっちゃってるわけか……。
でも、なるほどだ。
確かにそれなら、人手が多いほうがいいよな。
「……わかったけど、手掛かりがないと無理だよ」
陽子さんは、うーんと可愛らしく悩んでいる。
「そうねえ。確か『未踏破エリア』のほうだったと思うんだけど……」
ぅおい。
「……じゃあ、美雪ちゃん。頑張ってね」
「お願いマキ兄、見捨てないでえ――――!」
痛い、痛い。
腕を引っ張らないで。
「……でも、いきなりエピックの巣に行けって言われてもさ」
「マキ兄たち、いつも行ってたじゃん!」
まあ、そりゃそうなんだけど。
……うーん。
寧々のやつにも声かけるか?
でもなあ、なんか最近、ぜんぜん電話取ってくれないんだよなあ。
いつも川島さんには融通利かせてもらってるし、協力はしたいんだけど。
「……で、どうして姫乃さんはノリノリでスタンバってるんですか?」
「え?」
彼女は嬉しそうにレンタルの大剣を構えていた。
「そりゃ、あんた。久しぶりのダンジョンだなーって……」
「ダメです! 姫乃さんはここで留守番しててください!」
「なあ!? あんた、ひとをのけ者にしようっての!」
「言ってる場合ですか! 『未踏破エリア』なんて潜ったら一瞬で死にますよ!」
「で、でもでも! 前に行ったじゃないの!」
「あれは事故だからノーカンです! そもそも『未踏破エリア』には、プロ免許を持ったハンターしか潜れないんです。もし破ったらブラックリスト入りして、すべてのダンジョンに出禁になりますよ」
姫乃さんが、うっとたじろぐ。
「しょ、しょうがないわね……」
なおも不満そうだった。
まあ、ここには川島さんもいるし、ついでに見張っててもらおう。
「すぐに行くの?」
「うん。もう期日がやばくてさ。今日、見つかるとは限らないし……」
「それもそうだな」
おれはうなずくと、いつものレンタルの装備に着替えるべく更衣室へ向かうのだった。
残念ながら、姫乃さんとの夕食はキャンセルか。
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