25-3.エレメンタル確保へ
煌々と輝くエレメンタルを前に、おれたちは感嘆の声を上げた。
青く輝いているから、ここは水属性かそれに近いダンジョンなのだろう。
見回すと、エレメンタルの欠片が散らばっている。
おれたちは、それを片っ端から麻袋に詰め込んでいった。
「……ていうか、これならおまえだけでもいいんじゃないの?」
思いのほか上層にあったし、モンスターのレベルも大したことない。
「いや、問題はここからっていうかあー」
「は?」
首を傾げたときだった。
――シュンッ
そんな風切り音がしたと思うと、壁に大きな影が浮かんでいた。
「モンスターか!」
おれは剣を抜くと、その気配の方向へ向いた。
「……あれ?」
それを見て、おれは目を丸くする。
それはどでかい蝶々だった。
青と黒の不可思議な模様の羽を、ゆらりゆらりとはためかせている。
「……なに、あれ?」
「あっ! あいつがここを縄張りにしてるやつだし!」
「え?」
じゃあ、少なくともエピック?
見た感じ、あんまり強そうには見えないけど……。
ふらり、と意識が遠のきかけた。
その甘い香りに、慌てて口元をふさぐ。
「……この匂いは」
やつが羽を揺らすのに合わせて、金色の鱗粉が舞っている。
……なるほど、毒持ちか。
「ハナ。おまえのスキルで焼けないのか?」
「うーん。やってもいいんだけどおー、たぶん無理っていうかあー」
「……どういうことだよ」
ハナは手のひらを向けて、スキルを発動した。
その火炎弾が、蝶に命中する寸前で霧散して消える。
「いまのは?」
「なんか薄いバリアみたいなの張ってあって、スキル届かないじゃん?」
「……厄介だな」
バリアで守りつつ、鱗粉で敵を弱らせる。
見た目に反して、長期戦タイプのモンスターらしい。
この鱗粉にどんな効果があるのかは謎だが、やつの思惑に乗るのは得策ではない。
「速攻でカタをつける」
おれは片手剣を構えた。
本当なら『風神』を使いたいが、生憎と東京に置いてきてしまっていた。
おれは剣を水平に構えると、脚に強化スキル『ブースト』をかけて跳躍した。
この洞窟はそれほど広くはない。
すぐに射程内に近づくと、斬撃を放った。
と、そのときだった。
蝶がぶるりと震えると、ひと際大きく羽をばたつかせた。
――ぶわっ!
途端、その羽から大量の鱗粉が吹きつけた。
「ぐあ!?」
おれは慌てて顔をガードする。
そのままバランスを崩し、地面に落下した。
「だ、大丈夫!?」
ハナが慌てて駆け寄ってきた。
「近づくな!」
おれは彼女を手で制し、その鱗粉を払った。
「……くそ、油断した」
身体の様子を確認する。
特別、異変があるというわけでもないが……。
「……いや」
身体が、妙に重い。
起き上がろうとしても、まるで手足が鉛のように重かった。
とはいっても、石化や束縛のようなスキルではない。
「も、もしかしてやばい!?」
ハナが狼狽えながら言った。
「いや、たぶん大丈夫だ。これは恐らく、相手の体力を奪うスキルだろう」
「た、体力?」
「まあ、やる気がなくなるって言ったほうがわかりやすいか」
このスキルで相手が動かなくなったところを、ゆっくり仕留めるつもりだろう。
迂闊と言われれば反論のしようもないが、代わりに収穫もあった。
まず、あいつ自身の戦闘能力は低い。
そしておれの攻撃に反応したところを見ると、物理攻撃はバリアで防げない。
ただし問題は、先ほどの鱗粉で、あそこまで跳ぶ力が残っているのか。
「……どうするかな」
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