24-5.中継ぎ回…だと


 源さんが首をかしげる。


「……知り合い?」


 少女が怒りながら言った。


「知り合いなんてもんじゃねーし! あたしはこいつらのせいで……!」


「……どういうこと?」


 源さんに聞かれ、おれは返答に困った。


「えっと……」


 彼女がどこまで異世界のことを知っているのか。

 皐月さんの話では、人型モンスターのことを知っているのはごく一部で――。


「あたしがエレメンタル回収に行ったとき、邪魔した異界人だし! こいつとパツキンがいなけりゃ、うまくいってたのに!」


 うん、アレだな。

 もういろいろダダ漏れだな。


「……まあ、そういうことです」


「……ふうん」


 源さんは特に驚いた様子はない。

 たぶん、皐月さんと同じように事情を知っている側なんだろう。


「どうしてラミアが?」


 というか、他にもいろいろ聞きたいことは山積みだけど。

 特にその、人間みたいな二本足とか、二本足とか。


「……拾った」


「え?」


「……で、買った」


「……あの、もっとわかりやすくお願いします。その、いまの姿のこととか」


「…………」


 いや、そんな不満そうな顔をされても。


「……人型モンスターにも、モンスター核がある」


 ……いま、けっこう衝撃的なことがさらっと説明されたぞ?


「そうなんですか?」


 こくり。


「……普通のモンスターは、モンスター核を破壊すると死ぬ。でも、人型モンスターは違う」


「それが、この姿と関係が?」


 こくり。


「……そ、それで?」


「…………」


 源さんは黙っていたが、やがて面倒くさそうにため息をついた。


「……牧野。さっきから、この子のことばかり」


「え?」


「……なんでもない」


 源さんはそっぽを向いた。


「……どっちにしろ、知り合いなら都合がよかった」


「え、なにが?」


 そういえば、ここに連れてきた理由を聞いてなかったな。

 おれはふと、赤髪の少女と目が合う。


「……もしかして、こいつと関係が?」


「こいつとか言うなし! あたしにはハナって名前があるんだし!」


「いや、だってなあ……」


 仮にも命を狙われた相手に、そんなこと……。


「……ていうか、けっこう可愛い名前してんだな」


「う、うるせーし!」


 ぷりぷり怒ってるハナは置いておいて、と。


「それで、おれを連れてきた理由は?」


 源さんは神妙な顔で告げた。


「……わたしのクエストを受けてほしい」



 …………

 ……

 …



「牧野くん。三番を頼む。例の会社だ」


「はい」


 おれは支部長の声に返事をすると、取引先との打ち合わせのために電話を取った。


「はい。その件につきましては……、はい、はい。かしこまりました」


 ふうー。

 サポートだけとはいっても、これがなかなか面倒だ。

 本当に、二か月でまともに稼働できるようになるのだろうか。


「…………」


 と、隣のOLさんと目が合った。


「大丈夫?」


「は、はい」


 彼女は慌てた様子で目を逸らした。


 うーん。

 なんか、昨日からぎこちないな。


 おれ、なにかしたっけなあ。


 そう思いながらも、そんな疑問など次から次にやってくる仕事に忙殺されていった。

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