19-6.続・決戦準備


 ――エレメンタルはその消滅の瞬間、大きなエネルギーを発生させる。


 その強大な魔素を狙って、騒乱の巫女の手先がこの森を侵略している。

 それが向こうの手に渡れば、彼女たちの『成そうとしていること』が大きく進むことになるだろう。


 モノケロースはその刺客との戦いの果てに、あの傷を負った。


「……なんか、聞けば聞くほど、頭が混乱するな」


 おれは湖の脇に補助道具を仕込みながらつぶやいた。


「そうかな?」


 カンテラがそのアイテムを珍しそうに眺めながら言った。


「おれたちにとって、ダンジョンはただのハントする場所だったからな。そんな勢力がどうとか言われても、ぴんとこない。それにモンスター同士が争っているのも実感がわかないというか……。みんな、同じに見えるのにな」


「まあ、お兄さんたちから見たら、そうかなあ。わたしも、お兄さんたちの世界のニンゲン? は、みんな同じに見えるもん」


「……じゃあ、おれはどうやって見分けているんだ?」


「魔力の色だよ。これはひとによって違うの」


「へえ。おれはどんな色なんだ?」


 彼女はにっこりと微笑む。


「優しい色かな」


「…………」


 コホンと咳をして、この会話を打ち止める。


 そこへ、アレックスが新しいアイテムを腕に抱えてきた。

 それは大量の水晶の欠片のようなものだ。

 おれの前に下ろすと、ふうっと汗を拭った。


「これで最後よ」


「……よくこんなに用意できたな」


「エレメンタルの欠片を使ったの。魔素がこもっているし、ちょうどよかった」


 カンテラが興味津々という様子だった。


「お姉さん、すごいよね! こんなエレメンタルの使い方、わたし見たことないよ!」


「珍しいものじゃないわ。向こうでは、みんなこうしている」


「ふうん。おもしろいなー。一度、行ってみたいなあ」


「……マイロさんは、あまりいい顔をしないでしょうね」


「うん。まあね。それに、魔素がないところでは生きていけないって知ってるから」


「…………」


 妙にしんみりした空気になったのを、慌てて手を叩いて促す。


「ほら、ふたりとも。はやく終わらせよう。敵は夜に来るって言うけど、今回もそうとは限らない」


「うん。そうだね!」


 カンテラはぐっとこぶしを握った。


「この森は、あいつらの好きにはさせない!」

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