15-7.眠子
謎の女の子をおぶって進んでいく。
彼女は眠りかぶりながら、ときどき道を指示した。
「あ、お姉さん。そっち右」
「え、あ、うん」
分かれ道を右に進んでいく。
でも、不思議ね。
さっきから、一度もモンスターに遭遇しないわ。
「あの、お名前は?」
「わたし
「ね、眠子?」
「そだよー。眠る子どもで眠子」
変わった名前ね。
これもハンドルネームというやつかしら?
「その、眠子ちゃんはどうしてあんなところに?」
「えっとねー。確かねー。……なんだっけ?」
「し、知らないけど……」
「なんかでねー。ダンジョンに入らなきゃいけなくなってー。それで何匹か倒してたんだけどねー……」
「うん、うん」
「で、眠くなっちゃったの」
詳細の圧倒的な欠落だった。
「ね、眠くなっちゃったの?」
「そだよー。わたしねー、ダンジョンで魔素が切れると眠くなっちゃうんだー」
「あ、危ないわよ」
「大丈夫、大丈夫。あの間、この子たちが守ってくれるからー」
と、土が盛り上がって先ほどのゴーレムが顔を出した。
「こ、これ、あなたのなの?」
「そだよー。わたしのスキルでつくった人形なんだー」
「す、すごいわね」
いままで見たことがないタイプのスキルだった。
「あ、そっち左」
「え? あぁ、わかったわ」
分かれ道を指示通りに左へ。
わたしはここのマップはわからないし、慣れてるっぽいからいいのかしら。
「ねえねえ」
「なあに?」
「わたしもひとつ聞いていい?」
「い、いいけど……」
――ぐわし。
「え?」
気がつくと、背後から手が回って、わたしの胸を鷲掴みにしていた。
わしわしと握りながら、彼女はなぜか感心したような声を上げる。
「おぉ……」
「~~~~っ!?」
慌てて手を放すと、彼女がべしゃっと落ちた。
「んぎゃ!」
「な、なな、なにすんの!?」
「え。本物かなーって」
「ほ、本物に決まってるでしょ!」
「えー。だって、大人の女性のおっぱいは偽物だって言ってたしなあ」
「誰よ、そんなこと言ったやつは!」
「わたしの師匠だよー」
そうして、ぐっと親指を立てる。
「でもお姉さん、これはいいものを持ってるね。誇っていいよ!」
「うれしくないわよ!」
そこでふと、周辺の景色に違和感を覚えた。
「……あの、さっきからぐるぐる回っているような気がするんだけど」
「うん、そうだねー」
「そうだねって、出口に向かってたんじゃないの?」
「違うよー。わたしはモンスターがいないほうを言ってただけー」
「…………」
わたしはがっくりと肩を落とした。
「あぁ、もう! はやく戻らないと! さ、あなたも立って!」
眠子ちゃんが、両手をこちらに伸ばしてきた。
「おんぶ」
「……ハア」
わたしはその子に手を貸すのだった。
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