13-3.旧友と語らいます


「……ということがあったんだけど」


 パソコンのマイク越しに説明すると、通話相手のふたりは沈黙した。


『…………』


『…………』


 あれ。どうしたんだろ?


 と、相手の一人――ピーターがうんざりした様子で言った。


『マキノ。それはあまりにもあんまりだ』


「え。なにが?」


 もうひとり――キャロルがため息をつく。


『……マキノ。クロキチャン可哀そう』


「だからなんでだよ!?」


 あのひとがサバイバルしたいって言ったから、それを実践しただけじゃないか。


『わかってないなあ。いいかい、女性の求めるサバイバルっていうのは、つまりエスコートと同じさ。男に優しくリードされることに快感を……』


『リーダー。それ、女性差別』


『い、いや、そういう意味じゃなくてね。マキノが彼女の求めるものを的確に読むことが大事だと言いたいわけで……』


 主任の求めるもの、ねえ。

 あのひとは結局、冒険とお宝さあればいいんじゃないのか?


 あの風の谷以来、ピーターたちとはこうして話すようになった。

 結局、ロック・ドラゴンを狩り損ねたということだったが、意外にも凹んでいる様子はなかった。


「おまえたちはどうなんだ?」


『え?』


「いや、おれたちと違って未開拓ダンジョンにもよく潜るんだろ?」


『あー、そうだね』


 ピーターは肯定した。


『うちにはシェフがいるからね。ダンジョンではクロキチャンの言う通り、よくダンジョン素材を食べているよ』


「キャロルはそれが好きなのか?」


『わたしは美味しければいい』


 参考にならねえなあ。


『それでも、初めての味に感動する体験は、やめられない』


「…………」


『どうしたの?』


「いや、キャロルが言うとアレだな……」


『?』


 するとピーターが笑った。


『アハハ。確かにキャロルは異国での男漁りが好きだからね。もしかしたら、案外、クロキチャンと性質が近いのかもしれないな!』


『…………』


 ――ブツンッ。


 キャロルの通話が切れた。


『……褒めたつもりなんだけど』


「どこをどう聞いたら、そうなるんだよ……」


『ワオ! 牧野にデリカシーを教えられるとはね!』


 どういう意味だコラ。


『ところでマキノ、そろそろそっちではアレの季節だろ?』


「アレ?」


『ザビエルの討伐さ!』


 あー。

 そういえば、そうだなあ。


「でも、レイド戦は苦手なんだよなあ」


『いいじゃないか。ネネもいるし、いまはミユキチャンも免許を持ってる。きっとクロキチャンも喜ぶはずさ』


「まあ、考えとくよ」


 そんなことを話しながら、夜が更けていった。

 そして翌朝、おれはポカをやらかしたのだ。

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