9-3.螺旋の守護者
「これ、なに?」
主任たちも目を丸くしている。
「あまり近づかないでください。突風で巻き上げられたら、まっ逆さまですよ」
縦穴の底は見えない。
落ちたら、ということは考えたくないな。
おれは周囲を見回した。
この縦穴がダンジョンだとすれば、おそらく近くに下りる手段があるはずだ。
「……あった。こっちです」
おれは近くに、崖を削り出してつくられた階段を見つける。
それがこの縦穴を螺旋状に下りていた。
その各所に、洞窟らしき大穴が開いているようだ。
「……これは
「なにそれ?」
「えーっと……。美雪ちゃん、お願い」
こういうの、説明が面倒なんだよな。
その点、インストラクター志望の美雪ちゃんはそつなくこなしてくれる。
「ダンジョンには二種類あります。ひとつが、うちみたいに自然にできた洞窟とかにモンスターが住みついたダンジョン。そしてもうひとつが、この異世界の文明によってつくられた場所にモンスターが住みついたダンジョンです」
「異世界の文明?」
「はい。まだ確認されていませんが、海外には人間のようなものが住んでいた形跡のあるダンジョンがあるんです」
「えぇ!?」
主任が驚きの声を上げた。
「そういう廃墟にモンスターが住みついたのを、先人構築型といいます」
「なにが違うの?」
「いえ、大した違いはありません。ちょっと通路が整理されているのと……」
「と?」
美雪ちゃんが目をきらりと輝かせた。
人差し指と親指で、丸い輪っかをつくる。
「宝箱の中身が、ちょっとだけ豪華だったりします」
「…………っ!?」
主任がその言葉に反応した。
ふたりの目が、こちらに向く。
「……えーっと。このダンジョンの所有権はビルのオーナーにあります。もちろん、宝箱も同様です」
「…………」
「でも調査団が認定するまでは、その限りではありません」
簡単に言えば、調査団がすべてを認定するまでは「そこにないもの」として扱われるということだ。
その前に獲得してしまえば、中身はもちろん自分のものになる。
「よーし! やるわよ!」
「ぜったいにレアアイテムを見つけてやりましょう!」
女性陣ふたりは叫ぶと、その階段を下りて行った。
「あ、ちょっと待った!」
まったく、本当に恐いもの知らずだな。
どんな危険なモンスターが待ち構えているか、わかったものじゃ……。
『クルル……』
ふと、その声に身震いした。
そっと振り返る。
そして、そのあまりに巨大な影が太陽を背にしているのを見た。
大鷲の上半身、そしてライオンの下半身を持つ神の使い。
――グリフォン。
その黄色い瞳が、じっとおれを見つめていた。
「牧野ぉー。なにやってんのー?」
「マキ兄ぃー。早くしないと置いてっちゃうよー」
おれは階段から聞こえる声に、大声で叫び返した。
「――早く階段を下りろ! 大穴に飛び込め!」
階段へと駆け出した。
背後で、グリフォンが巨大な翼を広げた。
その翼は周囲の風を取り込み、魔力を増幅させる。
……来る!
おれは盾を構えた。
――ウルトラ・スキル!
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