4-3.危険地帯?もちろん探索よね


「未踏破エリア?」


 黒木さんが首をかしげる。

 あ、そういえばこのひと、初期講習受けてないんだっけ。


「モンスターのレベルが高すぎて、許可が下りたプロしか入れない場所なんです」


 まさか初心者のエスコートでこんなところに飛ばされてしまうなんて。


 これは参った。

 しかも予想通りなら、この場所にはあいつがいるはずだ。


 ひとりならまだしも、初心者の黒木さんを連れているとなると道は一つだなあ。


「えっと、黒木さん。これから言うことをよく聞いて……」


 うん?


 なぜか黒木さんの目が輝いているような気がする。

 この目をわたしは知っている。

 始めてダンジョンに潜る初心者ハンターとまったく同じ目だ。


 端的に言うと、わくわくしている。


「……黒木さん」


「なに?」


「もしかして、探検しようとか思ってないですよね?」


 ぎくり。


「だ、ダメ?」


「ダメですよ! 死んじゃいますよ!」


「で、でも、そんな場所、普通は来れないんでしょ?」


「いや、まあ、そうなんですけど……」


 マキ兄から話は聞いていた。

 モンスターハントについては、やけに知的好奇心が高いひとだと。


 でも、ここまでとは思っていなかった。

 さっきイシクイに危ない目に遭わされたのに、まったく怯えてない。


「いや、でも……」


「ちょっとだけ! ね、お願い!」


 可愛くお願いされても、ダメなものはダメだ。

 ここはビシッと止めないと、これで調子に乗られては――。


「それに、大丈夫よ」


「え?」


 黒木さんは、なぜか自信満々な顔で言った。


「どうせ、あの馬鹿がすぐ来るわ」


「…………」


 思わず、止めるための言葉が喉の奥に引っ込んでいった。


「……どうして、そう思うんですか?」


「うーん。……勘?」


「いや、勘って……」


 黒木さんは肩をすくめた。


「あいつ、新規とってくるのは下手だし、プレゼンも微妙だし、ほんと部下としてはイマイチよね」


「は、はあ……」


 なぜ急にそんなことを?


「でも、わたしがどんな無茶ぶりしても、必ず仕事は期日までに仕上げるわ。その責任感だけは認めているの」


「でも、ここは未踏破エリアだって……」


「だってプロなら入れるんでしょう?」


「…………」


 わたしは言葉に詰まった。


「し、知ってたんですか?」


「前にね、あいつが免許証を持ってるのを見たことがあるの」


 わたしは小さなため息をついた。


「……わかりました。でも、ちょっとだけですよ。危なくなったらすぐ逃げます。いいですね?」


「もちろん」


 まったく、できるんだかできないんだか。

 よくわからないひとだなあ。

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