3-3.週末のダンジョン
鬼のようなスケジュールを消化して、やっとこさの日曜日。
本当なら一日、家で寝ていたい。
しかし、そうは言っていられない。
今日はまたダンジョンに潜らなくてはいけないのだ。
「……ていうか週末までに資料上げさせたのって、これのためだよなあ」
おれはため息をついて、電車に乗った。
特別クエスト。
本来、クエストはダンジョンごとに設定されたものをハンターが自由に選ぶものだ。
しかし時々、まったく別の依頼主がクエストを設定することがある。
これは普通のハンターは受けることができない。
ダンジョン経営者が、信頼のおけるハンターに依頼を打診するのだ。
おれもこれまで、何度か受けたことがある。
その依頼は割りがいい。
ただし、同時に危険もある。
中には巷には流通しない特別な素材を欲しがる依頼主もいるのだ。
まあ、レベル5の主任に受けられる程度だから、それほど難しいものではないはずだけど。
そうして、今日も『KAWASHIMA』にやってきた。
施設の前で主任と合流する。
「ふふふ。特別クエスト。どんな強敵がわたしを待っているのかしら」
「いやあ、そんなに期待しないほうがいいと思いますけど」
「そんなのわかんないじゃない」
「まあ、そうですけど」
カウンターには、いつもと同じように美雪ちゃんがいた。
おや、今日はジャージ姿だ。
「どうもー。今日はすみません」
「いいのよ。どうせ暇だもの」
「いや、おれは別に……」
じろり。
「ウン、スゴクヒマダヨー」
「そうそう。それで、今日はどんなクエストなの?」
美雪ちゃんが一枚の紙を渡してきた。
「今日のクエストの詳細になります」
「そういえば、今日の依頼主って誰?」
すると背後から、野太い声がした。
「おれだ」
ぎょっとして振り返ると、まるで岩石のような大男が立っていた。
「か、川島さん!」
このダンジョンの経営者で、二階の酒場を仕切る川島さんだ。
「川島さんの依頼なんですか?」
「おう。今度、モンスターの素材を使った串焼きフェアをすることになってな。イシクイの肉を大量に獲ってきてほしい」
「へえ。でも、どうしてここに?」
最近はこっちのほうは美雪ちゃんに任せきりという話だったけど。
「いやなに。今日は美雪がいないから、仕方なくな」
「美雪ちゃん?」
いや、だって現にいるじゃないか。
と、いつの間にか美雪ちゃんの姿がカウンターから消えていた。
「マキ兄、なにやってるの。はやく行こう」
「え?」
見ると、転移の間の前に美雪ちゃんが立っていた。
主任もまた、驚いた顔で彼女を見つめている。
彼女の身体を覆いつくすほどに巨大な盾。
そして細身の彼女には不釣り合いな大きな一丁の拳銃。
彼女はにっと笑った。
「今日は、わたしもダンジョンに潜るからね」
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