アナザーストーリー
私が家に帰ってくるのは、いつも早朝だ。終電を乗り過ごしてネカフェで一泊して始発で家に帰るのがなんだか当たり前になってきてる気がする。親のコネで就職した会社も3年勤めれば多少愛着がわき、サービス残業にも精を出す。
駅の改札をぬけて、暖かい朝日を顔にうけて私は顔をしかめた。朝日は嫌いだ。この容赦なくやってくる光のせいでいつもイライラする。マンションにむけて歩き始めた頃、奇妙な音が背後でした。
【びちゃぁ…ぴちゃあ…】濡れたモップで床を拭くような音。
その嫌な音に私は反射的に振り返るが、昨日今日と快晴のためよく舗装されたアスファルトには、濡れたあと等全くなく後ろにも特に…なにも…な、
【濡ゥれたぁあぁ?】こんな声が耳元で聴こえて、私は悲鳴をあげて走り出した。気のせいだったかもしれない。でも凄く嫌な声だった。
久しぶりに走ったお陰でマンションに着いた時は、ひどく疲れていた。よりによって部屋が最上階の六階の為今日は、古いエレベーターをつかう。
誰がも押してないのに、二階でとまる。乗ってくる人もいない。ドアが閉まる。焦る気持ちが落ち着きをなくす。ちらっと二階の廊下から歩いてくる人影が見えた。やはり誰かが待ってたのか…。四階でとまった。
首が異様に長い女が見えた。ゆらゆら揺れながら、こっちへ向かってくる。慌てて「閉める」ボタンを連打すると、
女が、雄叫びをあげながら走ってきて、
【ぉぉぉぁぁぁああああああ】
【バあンっ!!】
そこからの記憶は私にはない。でも私はエレベーターから降りられてない事は確かだった。
画家にさようなら @tsukayama-kana
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