スパイラル
諸君らはご存知だろうか?
それはゼロ年代前後くらいのことだったか。
パプワやグルグル、そこに足すことのハレグゥなどの看板ギャグから王道少年漫画であるハガレンやソウルイーターを繋ぐ時代において、密かに存在感を放っていた一つの漫画を。
何を隠そう、それが「スパイラル」である。
ギリギリのラインで20代くらいなら「絶園のテンペスト」や或いは「虚構推理」と同じ原作者ですと言えば伝わるかな?
それはそれとして。
本作の序盤は探偵役たるピアスのイケメン主人公とワトスン的なおさげ便利屋ヒロイン。
そしてデザイナーズチャイルドであるハイスペックな敵役が、裏に表に暗躍する事件を軸に話が続く。
序盤はミステリファンからしたら見飽きた様なカビ臭いお馴染みのトリックが続き、正直普通の知性や想像力を持っていれば展開の予測が容易くて。
賢い人達の起こす頭脳戦と銘打つには正直そこまででも無い、パッとしない展開が続いたりもするけれど。
そういった点を除いてさ、原作者の力の抜けてるくせに洒脱な台詞回しがマジで秀逸なせいでスラスラ読める。
くっそかわいいリオくらいまでは、まあ割とそんな感じと印象で進む。
取り敢えずアレルヤだかハレルヤで万事オッケー! 引き金くらいは自分の意志で引けばいいし、苦いだけの薬水は飲み干しておけばいいと思う。
この物語の肝は中盤以降にある。核心も勿論そのあたりだ。ただし、ノベライズは除くよ?
なんとはいえ、一応は推理モノであるにも関わらず、戦闘向けにデザインされた敵に対して、迎え撃つあたりから「おや?」と感じる様になる。
なんだ、少年誌特有のバトル方面へのテコ入れかなと思っている内に明確な路線変更がある。
天下一武道会しかり、魔界統一トーナメントしかり、あとはジャンプやサンデーの唐突なトーナメント戦しかり。
なんというか己の存在意義を問うてきて、「どう生きてどう死ぬべきか?」とか「どうしてこの世に生まれたのか?」とかいうさ。
如何ともすれば実に安っぽい厨ニなレゾンデートルを突き付けて、その上で個人的な幸福とは何かという実に現代的な疑問を呈してくる。
加えて束の間に気まぐれで与えられた役割とか、絶対的な盤上に必須な立ち振る舞いとかを求められた主人公が最期に創造して目指したこれからとは…。
誇れることではないけれど、地元の大きな書店で立ち読みして号泣したのを強く覚えている。
後にも先にも立ち読みで人目を忍ばず号泣したのはガッシュとスパイラルの最終回だけである。
その微笑ましくもお金の無い少年のほっこりエピソードは厳密に言えば、勿論許されることでは無いけれど、その後ちゃんと紙のコミックスも買ったし、更にその後紙の本を処分した後も電子書籍を買って今尚タブレットで呼んでいるので…なんとかどうにか、どうか許して欲しい。どうぞよしなにという心境である。
個人的な懺悔は脇に置いておいて、昨今の劇的な異世界には無い現代の個人における──激動におねるささやかな結末が描かれたラストは読んでほしいなぁって思うよ。
構成=非≒物質 本陣忠人 @honjin
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