2話 「過去の空白」

 山中要の記憶は曖昧だった。思い出したいことは薄れていき、忘れたいことは明確な意志を持って彼女を襲う。小中高と一緒だった旭と再開して余計嫌な思い出が蘇る。

 旭に、小学校が取り壊されることを伝えた後要は自分の家に帰ってきた。夫はまだ帰って来ず今日も遅くなるだろう。最近特にひとりでの晩ごはんが多い気がする。


 要の旧姓は、南田だった。自分を助けてくれた刑事に恋をして半ば強引に結婚した。にもかかわらず夫は非常に優しく気遣いが絶えない。その優しさは天性のものなのだろう。

だから誘拐事件は忘れられた。


 でも神隠しは忘れられない。その時の記憶は断片的だが、鮮明なのは仲のよいクラスメートが一緒だったこと、要達が発見されたとき雪村雪乃がいなかったこと。そして彼女の一番仲が良かった友人である雪乃は20年、帰ってきていない。

 昨日の残りのカレーに火をかける。カレーは夫の大好物で、二日目のカレーは特に美味しさが増すから評判が良い。そのため要の得意料理だ。程よくあったまったカレーを食べながら彼女は雪乃について考える。


 雪村雪乃は要とは対象的に女の子らしい女の子だった。音楽が好きでよく授業では美しい歌声を聞かせる。もともと仲の良かったグループの中に雪乃を招き入れて、要達は仲良く過ごしていた。

 グループはいつもきまって祐一と旭、瑠衣の5人でいつも学校の裏の森で遊んでいた。

 

 7月、夏休みにいつものように5人ででかけ、森にて1週間消息をたった。

 らしい。要達は全く覚えていなかったし、雪乃の居所は誰もわからなかった。要には今でも悔いが残る。


 カレーを食べ終えて、要は不可解な事を思い起こす。彼女の元に届いた一通の手紙。


 それは、校舎の取り壊しの案内だった。差出人不明というおまけ付で。あの事件を知っている人には住所を教えていない。


 もしかしてー…

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子供達の日記 @tsukayama-kana

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