SAMPLE "K" ENDING
Yearning
好きな作家は鹿路けりまです!
すいません、私が鹿路けりまです。
この度、カクヨムでも掲載中の拙作『ぼくの妹は息をしている(仮)』が11月9日に電撃文庫より刊行される運びとなりました。
このような栄誉に浴させてもらい感謝の気持ちでいっぱいです。
内容についてですが、Web版からの全面的な再検討・加筆修正を経て、物語の構造がよりわかりやすく、洗練されたように思います。終盤にかけての展開は大きく変わって、謎だった部分も明らかになり、読後感がよりクリアになりました。とはいえ、それらは世界が脳回路というシステムに思惟されているかぎり起こりうる意識の変容と同じ性質のものであり、つどあらたに移ろいゆくなかでどれが「決定稿」なのか、と判断するすべはこちら側にはありませんし、新しいものが必ずしも古いものを否定するわけでもありません。作中の台詞にもあるとおり、物語に自然な完成などなく、見直すたびに修正ポイントが山のように浮き彫りになるので私も頭を抱えました。その意味でこれは平行世界の物語であり、決定論に対する自由意志の抵抗と解釈することもできるでしょう。登場人物たちは永劫回帰のように定まった筋書きをなぞりながらも、すべてのシーンにおいて言い回しが微妙に異なります。「対消滅エンジン」「対称性の破れ」などといった恣意的なタームが出現したのは最後の最後の再校著者校(第n稿、n > 10)においてであり、偶然物理化学の問題について私に調べさせていた神による完全なる天啓です。詳細が気になる方もならない方もぜひ書店にてお買い求めください。
さて、あなたが訪れなければならなかったこの章ではうつくしい最果ての地で思いがけず再会したとある人物との会話の中から、物語世界の完全な見取り図が受け渡されることになっていましたし、あなたもそれを予感していたはずです。
しかしテクストの海を漂流したあなたはどこかで航路をまちがえたのか、「鹿路けりまの近況ノート」に不時着してしまったようですね。
興醒めしましたか。気の毒ですね。でもこういうことは珍しくありません。夢というものはいつ覚めるかわからないものですから。むしろ、よくここまでたどり着いてくれました。
この道は一方通行ですが、あなたにはまだ選択することができます。
ここをすっかり抜けたあと、暗闇の中に今の記憶を封じ込めるか。
それとも本当の光を求めてもうひとつの入口から入り直すか。
わたしが何を言いたいかわかりますね?
とても清々しいものですよ。
他人の目玉をぶっ潰す気持ちは。
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