内藤さんと憂鬱な女神

作者 高部

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★★★ Excellent!!!

トランペットの視点から語られるという、ユニークな吹奏楽団の物語。

楽器との出会いは運命、とよく言いますが、ひかえめな内藤さんとしっとりとしたクセの強い音色を持つトランペットのフォルトゥナさんの出会いもまさにそうだと思います。

フォルトゥナさんは、内藤さんにいつも語りかけていますが、決して一方通行ではないのです。内藤さんの音色やちょっとした仕草から、フォルトゥナさんへの信頼感が伝わってきました。

演奏は、いつもふたりで。

私も楽器をやっていたので、
あのとき楽器たちはこんなふうに考えていたのかな!
などと懐かしく想いを馳せ、
現役時代に読みたかったかも、と思ってしまいました。

ちなみに、私の密かなお気に入りポイントは、トランペットどうしの会話です。
奏者に似たのか個性的で、思わずにやりとしちゃいます。

雨上がりの匂いのする読後感。
晴れの空より曇りの日が落ち着く人にもおすすめです。

★★★ Excellent!!!

YAMAHAは使いやすく、Bachは金管楽器では一番メジャーかもしれません。そんな中、内藤さんの使うのはFortunaの楽器。

しっとりと哀愁漂う音を作るのは得意でも、吹奏楽で必要とされる明るい音は苦手。

ね、こうしてみるとどこか人間みたいではないですか?

私の楽器はトロンボーンのトロ子というヤマハのものでしたが、単純でまっすぐな音が出ました。学校に全く同じメーカーの全く同じ型のものがあったのですが、トロ子とは癖が違う。やっぱり吹いてもいつも通りにはいかないんですよね。(ま極論いえば上手い人が吹けばなんでも綺麗に聞こえるんですけどね。)

奏者にとって楽器は相棒です。人に個性があるように楽器にも個性があります。人の手となり足となり、体の一部のようでどこか楽器自体にも色がある。そんな楽器目線の小説はいかがですか。

★★★ Excellent!!!

楽器を演奏する人の中には愛器に名前を付けて大切にするものもいるが、もしその楽器が意思や人格を持って持ち主や周囲の物事を見ていたとしたら、ましてや楽器同士で人間たちの様子を語り合っていたら……そんな素敵な設定の物語です。楽器クンたちが持つ性格がそのまま、その楽器で奏でられる音色にもつながっていくという発想が面白く、今後の展開が楽しみです。

★★★ Excellent!!!

いやー、すごいしっかりと丁寧に書かれた作品です。
現実感あるお話の中で語り部となる「私」が愛用の楽器であること。その視点から語られる持ち主への思い出や敬意は思わずグッとくるものがあります。
それに同じ楽器でもこんなに音色が違うのかと手を打つシーンもあったり、昔少しだけ吹奏楽でトランペットをやってた時の思い出が蘇りました。

ちょっとした隠れた名作だと思うのでみなさんもぜひ。

★★★ Excellent!!!

諦めきれない夢の物語をリアルに描くオトナの音楽活劇。
冒頭ではちょっとした叙述トリックが仕掛けられている。作品の解説文にあるように、この小説の語り手「私」とは、人間ではなくトランペットなのだ。
「私」の持ち主たちが繰り広げる儚くも楽しい人生譚と、楽器どうしで繰り広げられる軽妙な会話の数々。
リアルとファンタジーが同居する不思議な世界観に、実在の曲名をふんだんに交えた音楽談義が相まって、読む者を引きつける作品に仕上がっている。
まだ始まったばかりだが、今後の展開が楽しみになる一作だ。