臆病者

 より人の少ない廃墟を選び、他の男たちとの接触を避け、常にフードをかぶり、蔑まれ、影のように過ごしているはずの「臆病者」たちが、続々とひとけのない通路に集結していた。

 元剣士たちと同様に、臆病者たちもまた何らかの理由で剣士の立場を剥奪され、衛兵の区画を追われたものたちのはずだった。

 普段は丸めている背を今は伸ばしていた。背筋を伸ばした彼らは元剣士たちと同じように居住区の男たちを圧倒するほどの堂々とした体格だった。普段のようにこそこそと動き回っている時の彼らとは別人のような無駄のない動きで整然と列を成していく。

 徐々に列が動き出す。

 足取りはわずかな狂いもなく一致していた。進む列の最後尾には、まだ集まり続けている臆病者たちがつながり続けている。

 列の進む速度が上がった。

 胸を張り小走りで進む。

 深く被ったフードに隠された目が、一瞬光った。

 彼らもまた、崖をめざしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る