奔流

 居住区のあちこちから煙が上がっていた。

 通りを走る男たちの流れに、次から次へとまた別の、地下での儀式に参加していなかった男たちも合流してくる。途切れることのない流れが居住区の通路を駆け抜けていく。

 ごった返す配給所では、男たちがベルトコンベアを力任せに地面から引き剥がそうとしていた。どれだけ男たちが群がってもベルトコンベアはピクリとも持ち上がらない。業を煮やした男たちはアルコールを撒き散らし、火を放った。その炎も最初はすぐに消えた。消えてはまた点けてを繰り返すうち、黒い煙が上がり、アルコールの青い炎ではない赤い炎がじわじわと広がっていく。

 男たちは建物の中に入り家具を燃やした。路上に散らばるゴミに火を放った。何も無ければ路上にアルコールを撒き、そこに火を点けた。

 誰もが生き生きとしていた。目を輝かせていた。

 駆け回る男たちの先頭には元剣士たちがいた。疲れを知らぬ彼らは男たちを導くべく走り続ける。休む暇はなかった。脱落するものはほとんどいない。熱狂が男たちを突き動かしていた。

 奔流となった男たちはうねりながら改めて世界の中心を、宮殿を、宮殿を臨む崖をめざす。

 元剣士たちが高く掲げた火が目印だった。火を持つものは火を、火を持たないものはこぶしを突き上げた。

 何もかも焼き尽くし宮殿をめざす。

 彼らの思いは今、ひとつになっていた。

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