29 おにゃんこさん。しゃべった?


最終話です。今まで、ありがとうございました。


6月の終わりのある日、拓人は目撃した。


「 んわわん。 理緒、×÷×●◎ んなん。」


リビングの隅で、おにゃんこさんがおしゃべりをしているように鳴いていた。


( 一瞬、理緒って言ったような。気のせいか?)


「 んわわ。んななん。理緒 〇×÷◎んなな。」

「 僕、疲れてんだ。多分。」


拓人は、その場を離れ自分の部屋に向かった。

フラフラと、拓人が離れていくのと、入れ違いに、理緒がリビングにやってきた。



「 んわわ。んなな。んなー んわわ。」

「 おにゃんこさん。また窓越しによその猫にケンカ売ってんじゃないよ。ほら、あっちいくよ。」

「 んなー。んわわ。」


理緒は、毛を逆立てて、んわんわ騒ぐおにゃんこさんをリビングから出した。


そう、拓人が、目撃したおにゃんこさんは、おしゃべりしているのではなく、近所の猫相手にケンカを売っていたのである。


「 おにゃんこさん。ねぇ、ケンカ弱いくせに、なんでよその猫にケンカ売るかね? しかも、窓越しに。」


理緒は、自分の部屋でおにゃんこさんを撫でながら、話かける。


「 んなー んなな。んなん。」

「 よそ者に、縄張りを取られたくない。けど正面からケンカ売るのは、怖いから窓越しに売っている。」

「 んな。」


おにゃんこさんは、頷くように鳴く。

理緒は、おにゃんこさんの言い分に呆れた。


「 あのさ、窓越しに、んなんな鳴いても意味ないよね。」

「 んな! んなん。んなな。」

「 理緒が、相手を追っ払ってくれるから平気。なんじゃそりゃ。」

「 んな。」

「 おにゃんこさん。昼間、俺いない時に庭で遊んでて、よその猫来たらどうするの。」

「 んなー んな。」

「 その時は、すぐ逃げる。はああ。」


おにゃんこさんの行動に飼い主として、理緒の思いは、複雑だった。


「 いや、怪我したおにゃんこさんを病院に連れていく事考えたら、ケンカしてほしくないし。でもねぇ。情けない。」

「 んな? んなな。」

「 理緒、どうしたの? って言ったの。なんでもない。」


( おにゃんこさんなり考えて行動してるんだもんね。 )


理緒は、そう思い、おにゃんこさんの毛に顔を埋める。


「 おにゃんこさん。ずっと、一緒にいようね。」

「 んなな。」



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神様のお願いでニホンに転生させられました。 猫田 まこと @nekota-mari

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