童貞でも戦えますが?
@gesshin5233
第1話 プロローグ
冷たい風が吹く夜の廃ビルの中、一人の男が小さく燃える死骸と共に立っている。男は消えゆく炎をただじっと静かに見つめていた。
そこに静かに近づく女性、女性は足音もなく男の背後に立ち肩を叩こうとしてやめる。
気配で気づいたか、男は顔を一度手でぬぐってから振り向き、
「終わった……。」
と、一言つぶやいた。
その言葉になんとも言えない顔をする女性。彼女は喜びとやるせなさと申し訳なさで口を開けなかった。
そんな顔を見た男もまたつぶやいた以降口を開こうとしない。
重くなった口をやっと開いた女性は、
「願いを……。」
その言葉に驚いた男は口に手を当て深く考える。彼の頭の中でどういう考えが廻っているのか知る由もない。
女性は黙って答えを待つ。もう炎も消えて辺りは夜の帳に包まれ、隙間風の音が耳うるさくなっていた。
男は手を戻し上を向く。隠そうとしているが頬に重力に負けた涙が一筋一筋流れ落ちる。男は涙を拭い、良い顔つきで答えを言う。
その願いに女性は驚いた後に少しだけはにかみ、
「良き願いです。」
そう告げた彼女の言葉は何者よりも優しかった。
童貞でも戦えますが? @gesshin5233
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