月明かり

いくま

満月

河の土手で寝転がって空を見る。ここは彼女との思い出の場所。一緒にここで月を見るのが好きだった。暗い土手に2人で寝転がり手を繋いで、川の流れを聞きながら温かい月明りを浴びて、たわいない話をして笑いあって…そんな日常はもう、壊れてしまった。


彼女は消えた。満月の夜に。

いつものように2人で月を見ていたはずだった。

2人とも疲れていたのかだんだん口数が減り、眠ってしまった。

何分経ったのだろう。起き上がると彼女は隣にいなかった。手にはまだ彼女のぬくもり。近くにいると思い、探しまわるが見つからない。家に帰ったのかと見に行ったが家は暗いままだった。電話もメールも何回もしたが、反応はない。まるで神隠しにでもあったかのようだった。何週間、何ヶ月探しても彼女が僕の前に現れることはなかった。


電話もメールも繋がらなくなった頃、彼女の部屋でぼーっとするのが日課になっていた。

『勝手に入らないで!!!』って怒って戻って来るかもしれない…そう思って。

1時間くらい経って部屋を出ようとした時、机にぶつかってしまいノートが落ちた。小さい黄色のノートだ。僕は迷いもなくページをめくる。

真っ白なページばかりだったが、最後の1ページ、こう書かれていた。


【また2人で、月を見に行こうね。】




寝てしまっていた。そろそろ帰らなければ。

ポケットに入れた左手はなんだか温かくて、彼女のぬくもりを感じた。


今日は、満月だった。

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月明かり いくま @kicho_ikuma

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