第4話

そんな幸せのような日々を過ごしていた。

季節が変わって、夏になる。

夏休みが近いと騒ぎ出す。

僕は相変わらず、窓の外で揺れる若葉を見ていた。

そのまま何事もなく、夏休みとなった。

色々な人から夏休み中遊びに誘われた。

海に行ったり、山に行ったり、外国にも行った。

その訪れた場所で様々な写真を撮った。

僕は写真が好きだった。

でも、人は全く撮らなかった。

僕の中であくまで人は風景で、人を主として撮ることは1度もなかった。

そして、夏が終わる。

若葉だった葉は秋に向けて段々と色をつけて行った。

夏休みが開けると、みんなの肌は黒くなっていた。

部活動に打ち込んだ人が多く、真っ黒だった。

そんな中、真っ白な僕は異様に目立ってしまった。


みんなの黒くなった肌にも見慣れてきた頃。

1人の転校生がやってきた。

こんな時期に?とみんなが不思議に思った。

僕の隣にある空席。転校生が座るのだろうか。

ホームルームの始まりとともに入ってくる先生。

その先生の後に、小さな女の子が1人。

自己紹介をして、僕の隣の席に近づく。

あぁ、やっぱりこの席は、あの子のなんだなと思った。

不意に、クラスの男子の視線が彼女に集まっていることに気付く。

すげー、可愛い、などといった小さな声が聞こえてきた。

女子は少し不機嫌そうに、男子サイテーと言っている。

僕は彼女の顔をよく見てみる。

確かに世の中でいう美人の類だ。

でも、僕はそれで終わった。

あまりにじっと見すぎたのか、彼女が僕の方を見てペコリとお辞儀をした。

僕も合わせてお辞儀を返す。

小さな声でよろしくお願いします。と言われた。

僕はよろしく。とだけ返した。

そのまま、窓の外を見る。

夏休み前よりも少しだけ葉が増えた気がする木を、僕はずっと見ていた。


僕は彼女に学校を案内する事になった。

正直面倒臭い。

先生に頼まれたが、やらないですむならやりたくない。

男子からはいいな。なんて声が聞こえたが、譲ってやりたいぐらいだった。

だが、ここで譲ってしまうと、彼女に失礼なので僕が案内することになった。

とりあえず学校を1通り見て周り、クラスに戻って帰ることになった。

帰る方向が一緒らしく、僕達は並んで帰った。

沈黙が続いたが、僕はそんな事は気にしない。

彼女が沈黙に耐えられなくなったのか、口を開いた。

「あの…」

そんな小さな言葉を。

「なに?」

僕は出来るだけ素っ気なくないように返した。

「何も聞かないんですか?」

彼女の言っている意味は分からなかった。

「どういう意味?」

僕の言い方がきつかったか、彼女は少し怯えているように見えた。

「この時期に転校してきたこと…何も聞かないんですか?」

彼女の言葉に、僕はあぁと思った。

「別に興味無い。」

と僕は短い言葉で終わらせた。

彼女は、少し驚いた顔をして笑った。

「君、変わってるね。」

と笑顔で言う。

五月蝿いよと言い返しておいた。

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小さな愛の形 🌸 @mokomokona

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