第21話 空中 着地 そして……

「なんで見つかったんだ、って顔だな。お前からは悪魔の気配が駄々漏れで近くにいるだけでわかるぞ」


「そ、そうなの?」


「もし気配がなかったらあの淫魔は来ていないぞ」


「そうだったね……」


 隠れることに夢中で忘れてた。


 でも待って、堕天使がここにいるって事は。


「AIBUさんは?」


「まだここにいる事は気づいていないみたいだ。気配が感じないからな」


「そっか」


 でもいつ見つかるかわからないから不安だよ。


「どうしよう。逃げ場がないじゃん」


「だな。奴を追っ払う方法は一つしかない」


「あるの!?」


 でも『追っ払う』って荒々しい感じがするんだけど。


「ミント」


「な、何?」


 堕天使が屋根から降りてきて近づいてきたら、いきなり私の右手を取った。


「来い!」


 無理やり公園の真ん中に連れて行かれた。


「って、こんな所に居ると見つかるじゃん!」


「追っ払うんだから見つけないと意味ないだろ」


 それはそうだけど。


 一体何を考えているんだろう。


「行くぞ」


「え?」


 今度は私の後ろに堕天使が回り込み、私のお腹を両腕でガッシリと捕まれた。


 この体制って、まさか……。


「きゃああああああ!」


 予想通り、堕天使は私を空への危険飛行へ連れ出した。


「降ろしてぇぇぇ!」


「仕方ないだろ! 我慢しろ」


 ヤダヤダ我慢できない!


 私は全身を動かして抵抗した。


 こんな状態じゃ見つかるに決まってる。


「今ここで暴れたら落ちるぞ」


「ヒッ……」


 私はすぐに全身抵抗を止めた。


 でも空中浮遊は嫌だ。


 今どの辺を飛んでいるんだろう?


 下は見たくないので全然わからない。


「……チッ」


「え?」


「追いついてきやがった」


 み、見つかったの?


 私はさらに怖くなった。


「急ぐぞ」


 堕天使はスピードを速めた。


「落とさないでよね!」


「誰が落とすか」


 お父さんとお母さんが運転する車よりもスピードが速くて不安になる。  


 私は思わず目をつぶった。


 怖い。怖い。怖い!


 どうしてこんな目に会わなくちゃいけないの?


 私が悪魔になったから?


 ならどうして私が?


 もう本当に嫌……。


「クソッ!」


 飛んでいた堕天使が何かの上で降りた。


 ここ、どこだろ?


 見回すとどこかの高い建物の上にいるようだった。


「やっと追いついた」


 AIBUさんも降りてこっちに近づいてきた。


「諦める気は無いんだな」


「ええ。だって力を手に入れる為にここに来たんだもの」


「俺がいる限りできない、と言ったら?」


「もちろん……力ずくよ!」


 AIBUさんが大きく広げた両方の翼で堕天使に向かって襲い掛かってきた。


 堕天使は一瞬で避けたと思ったらすぐにAIBUさんの後ろに立っていた。


「なっ!?」


 AIBUさんは驚いて後ろを振り向いた瞬間、堕天使に羽交い絞めにされた。


 すごい。


 堕天使ってあんなに早く動けるんだ。


「これでお前も動けないだろ」


「ぐっ……」


 これでAIBUさんは動けない。


 勝負あった!


「なんてね」


 ドスッ


 小さくて鈍い音が聞こえた。


「後ろで捕まえたら攻撃できないと思った? 残念でした」


 AIBUさんの片方の翼が堕天使の体を貫いていた。


「ウソ、でしょ」


 堕天使がやられたら……私はもう。


「さーてと。ミントちゃん」


 AIBUさんが近づいてくる。


 に、逃げないと……。


 でも足が思うように動かない! 


 でも後ずさりならできそうなのでちょっとずつ後ろに下がった。


「ちょっと! それ以上動いたら……」


「え?」


 宙に浮いたような気がした。


 まさか、と思って下を見てみた。


「お、落ち……」


 落ちてるー!?

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