第12話 突き落とし

「悪魔化!?」


 しかも『順調に進んでいる』って。


「まだ羽が生えていないだろ。昨日も言ったがこれから羽が生えて、尻尾も出てくる」


「嘘でしょ!? 嫌だ!」


 だんだん人間じゃなくなっていくなんて……。


「仕方ないだろ。言っておくが元には戻れないからな」


 嫌だ。人間に戻りたい!


 昨日まで六年生の生活を楽しみに待っていたのに、まさかこんな事になるなんて。


 昨日に戻れたら、あの時寄り道なんかしなかったら。


「羽が生えるのにはしばらくかかりそうだな」


「いいよ。むしろ生えて欲しくない」


「……高い所から突き落とせば生えてくるらしいぞ」


「落とさないでよ!」


 っていうか何で高い所から突き落とせば生えるってどうゆう仕組み!?


 羽が生える事は空を飛ぶことができそうだから便利で嬉しいけど悪魔になるんだったらいらない。


「……ちょうどこの近くにタワーがあるよな」


「残念でした。五稜郭タワーは入場料がかかるんだよ」


 450円は大金なので払いたくない。


「大丈夫だ。俺が飛んでタワーの屋上に連れて行ってやる」


「余計なお世話だし見つかったら死ぬほど怒られるよ!」


 さらにコイツが突き落とした、なんて言ったらどうなっちゃうんだろう。


 ネットという怖くて便利な物で。函館、いや全国で知れ渡ってしまう。


 突き落とされるなんて冗談じゃない。


 五稜郭タワー。全国的にも有名な函館のシンボルで人気の観光スポット。


 小さい頃からあのタワーを見ているのでどれくらい高いのかはよく知っている。


 転落事故は聞いた事がないけど、あの高さから突き落とされたら確実に命はない。


 冗談でも笑えない話だ。

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