第10話 昼休みの日課

 学校での堕天使はかなりの好青年いや、好少年だった。


 クラスメイトとの仲も良くて、いわゆる人気者だった。


 しかし私に対しては『冷たい』って感じがした。昨日のことで怒っているんだろう。


 体育でやったドッジボールなんてエースとして活躍していた。


 堕天使の相手チームになった私はいきなり狙われて見事に当てられた。今日ほど自分の運動オンチを後悔したことは無い。


 ようやく昼休みになって心も体も落ち着いた。今日も図書室に行こう。


 私は昼休みに図書室の奥にあるソファに座って本を読むのが日課になっている。


 四年生から学習マンガの伝記を読んでいる。特に外国人女性の伝記をよく読んでいる。


 そういえば伝記の人達ってツライ事が必ずあったんだよね。でもそれを乗り越えて成功して有名になって、こうして伝記として残っている。


 私も今の状況はかなりツライ。頑張ればこの人達みたいにハッピーエンドになるのかな?


「おい」


「うわっ!」


 いきなり堕天使が後ろから声を掛けてきたので驚いて思わず大きい声を出してしまった。


「ここ図書室なんだから驚かさないでよ」


「お前本を読むのが好きなのか?」


「え? まぁ……」


 学校では小説と学習マンガ、家ではマンガって感じだけど。


「アンタも好きなの?」


「まぁな。でも俺が好きな本は小学生には刺激が強すぎて言えないな」


「そうですか」


 私の隣に座る堕天使をよそに私は再び読み始めた。


「……」


 何?ジッと見て。アンタには読ませないから。


 堕天使は黙って私を見ている。


 気にしてもしょうがない。私は無視して本に集中した。


 堕天使の視線から開放されたのは昼休み終了のチャイムが鳴った直後だった。

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