第9話 学校での來斗

 必死で走ってきたけど元々運動が得意じゃないし、羽を生やして追いかけてくるような奴から逃げられる訳もないので一緒に学校に着いた。


「はぁ……はぁ……」


 こんなに走ったのも久しぶりだよ。


「お前どっちかと言えば足遅いんだな」


「うるさい!」


 自分でも納得しているけど人に言われると腹が立つ。


「お前と同じクラスにしたからな」


「同じクラス!?」


 二十四時間ほとんどコイツと一緒にいなきゃいけないの?


「当たり前だろ。お前を監視しなきゃいけなんだからさ」


「はぁ……」


 昨日の自分に言いたい。「ソイツについて行くな! 一生面倒な事になる」って。


 校門前にずっといても仕方ないので私は小さく息を切らしながら靴箱に向かった。堕天使も一緒に。


 内ズックに履き替えて教室に向かっているとチラチラと視線が感じた。


 私の顔に何か付いているの?


 教室に着いて自分の机にランドセルを置いて中から教科書やノートを取り出していると冬ちゃんが教室に入ってきた。


「おはようミントちゃん」


「おはよう」


 冬ちゃんは自分の席にランドセルを置いて教科書とノートを取り出し終わると私のところへやってきた。


「あのさミントちゃん」


「どうしたの?」


「來斗の好きなお菓子聞いた?」


「へ?」


 何のこと?


「昨日話していたじゃん。『來斗の好きなお菓子ってなんだろうね?』って」


「えっ……」


 確かに昨日は堕天使の事について話していたけど。


「誕生日に渡すプレゼントを考えているんだよ。今日こそ聞いてね」


「ゴメン。わかった」


 そうか、私と堕天使以外は記憶がすり変えられているからか。


 それにしても冬ちゃんは優しいなぁ。私だけじゃなくて堕天使にもお菓子をあげるなんて。


「來斗、今日はされるかな?」


「何を?」


 私が聞くと冬ちゃんは耳元に顔を近づけてきた。


「告白に決まってるでしょ」


「え!?」


 堕天使って告白されてるの?


「噂だと最近は四年生からもされたらしいよ」


 じゃあ朝にジロジロ見られていたのは私じゃなくて堕天使!?


「ま、周りの男子に比べればイケメンに入るからね」


「そうかな?」


「毎日見ている家族からはそう見えないか」


 いや、昨日会ったばかりだからね!


 イケメンねぇ……確かに私も初めて見たとき「クラスの男子とは違う」って思ったのはそれかも。

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