第6話 私が悪魔に!?

 どれくらい時間が経ったんだろう。


 私のファーストキスは今日始めて会った彼に奪われてしまった。


 彼は力を加えたまま離さない。離す気が無いのが伝わってくる。


「……っはぁ!」


 彼は突然唇を離した。


「やっぱり駄目か」


「駄目って何!?」


 私はたまらずに男の頬を平手打ちした。


「何だよ」


「何だよ、じゃない! 人のファーストキス勝手に奪っといて『駄目』って何!?」


 怒り任せに喋ったのでかなり大きな声になった。


 ここまで人に怒ったのは初めてだ。


「お前、さっきの悪魔見たよな」


「そうだけど」


 急に何質問してきてんの?


「お前はあの悪魔に襲われたよな」


「そうだけど、何ともなかったよ」


 体調も悪くなってない。


「単刀直入に言う」


 何よ。


「お前は悪魔になった。人の悪意を読み取れる特別な悪魔にな」


「へ?」


 『悪魔になった』?


「納得していようだから説明してやる」


 男は一歩後ろに下がった。


 バサッ


「えっ……羽?」


 男の背中から黒い翼が2つ出てきた。


 どうなっているの?


「この翼が見えるな?」


 私は黙って頷いた。


「見てわかるとおり俺は人間じゃない。堕天使だ」


「だてんし……」


 初めて聞いたけど黒い翼なので普通の天使ではない事はわかった。


「お前もいずれ悪魔の翼が生えてくる」


「嘘でしょ……」


「今はまだなったばかりだから生えないが、そうだな……早くて一週間くらいで生えると思うぞ」


「そ、そんな……」


 私が悪魔に?


 こんなの夢だよね?


 夢なら早く覚めて。


 お願いだから!


「うっ……」


「どうした?」


 何だろう……突然体がクラクラし始めた。


 体がふらついてバランスが……。


 バタン


 私はバランスを崩してそのまま倒れてしまった。

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