第5話 儀式

 日も暮れてすっかり夜になってしまった。


 少ない公園の明かりの中で彼は立ち止まったままだ。


 後ろ姿なので前から見れば何をしてるかわかる思うけど、気づかれてしまうので前の方へは行けない。


 一体何をす……。


「え?」


 私は一瞬、何が起こっているのかわからなくなってしまった。


 だって、だって……。


 黒くて悪魔みたいな形をした怪しい影が男の人の目の前に現れたんだよ!?


 驚かない方がおかしいって!


 あれ、一体何なの!?


 最近のマジックとかだとしても、あんなのをどうやって。


 ……まさか本当に悪魔? だったら何で?


 彼は黙って立ったまま何もしない。


 悪魔のような影が大きくなり彼を襲おうとした!


「だめぇ!」


 何も考えず私は彼の前へ必死で駆け出した。


 襲われないように彼を横から押し倒すと私も倒れた。


「はっ……!」


 倒れた直後、悪魔のような影が私に襲い掛かってきた!


 黒い影が私を覆っていく。


 死んじゃうのかな? 私・・・・・・。




「……あれ?」


 なんとも無い?


 確かに私はあの悪魔のような影に襲われた。


 でも何ともない。


 やっぱりマジックとかだったのかな?


 だったら悪いことしちゃったなぁ。


「おい」


「っはい!」


 初めて彼に話しかけられた。


 どうしよう、何て言えばいいんだろ?


「お前とんでもない事してくれたな」


「すみません! 練習の邪魔しちゃって」


「練習?」


「マジックか何かの練習をしていたんですよね? さっきの悪魔みたいな形の影すっごくリアルでしたよ!」


「おい」


「本当にごめんなさい。私は帰りますので練習頑張ってください!」


 私は頭を下げて立ち上がって帰ろうとした。


「逃がすかよ」


「え? ちょ、何を……」


 彼は私の体を後ろから羽交い絞めした!


「お前、さっき俺がやろうとした事を手品か何かだと勘違いしているな?」


「ち、違うんですか?」


「当たり前だ! あれは儀式だ」


「ぎ、儀式? 一体何の……」


 私が聞く前に彼は私の体を無理やり自分の方へ向けた。


 そして私の顎を片手で掴んだ。


「な、何を……」


 !?


 男の人は私に強くキスしてきた。

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