第52話 命を狙うのは・・・
その夜、僕たちは警察にかけこんだ。もはや、プロポーズどころではない。
警察には、25年前の殺人未遂事件、2年前のパソコン遠隔操作事件など、詳細に話した。
「それは、また狙われている可能性があるな。今日からしばらくパトカーでの移動をしてください」と警察ですばやく対応してもらえた。ミキは覆面パトカーで家に帰っていった。
「カズヤくん、おかえり〜」ネズミ人形がとことこと歩いてきた。もうすっかりぼろぼろだ。無理もない。20年以上前にいいかげんにメグミが作った人形だから。大事にしたつもりだけれども、やはりほころびがあちこちに出ている。
「二人暮らしはいいねぇ。コソコソしなくていいからね」
「でも、まもなく僕は…」
「そうだね、もう一人家族が増えそうだね」
「そうなんだよねっ!」僕は神様をギュッと抱きしめた。
「でも…ちょっと大変なことが起きてる」
「知ってるよ」
そう。神様はなんでもお見通しなのだ。
「ねえ、誰なのこれやっている人って」
「それは、言えない」
「そうだよね、自由意思が大事だからだよね。どんな殺人犯だったとしても」
神様は何も答えなかった。
「一つだけ教えてあげるよ」
「何?」
ー驚いた、なんだろう。
「犯人は君が知っている人だ。タクヤの時からずっと」
「もしかして…」
「そうだ、君とミキさんを25年前に狙った人間だ」
「なんだって!」
やはり、僕とミキを狙った犯人は同一人物だったということなのか。25年前のことを詳しく知っているのはやはりあの人だ。それに、あの人はとても気になることを2年前にポロッと話した。僕は最後までその話を聞けなかった。もう一度、あの人から話を聞きたい。
iPhoneを取り出した。うう、気が重いけど電話をしてみよう。
もう電話番号を変えているかもしれない。つながりますように。
僕は電話をかけた。
「もしもし」ーつながった!
「ハルナ、久しぶり。カズヤだよ」
「わかってる。元気してた? 仕事は順調?」
「ああ、大変だと思うこともあるけど、楽しいよ。ハルナは?」
「うーん、まあ自由に出歩けなくなって不便だけど、仕事には生きがいを感じているわ」
ハルナは、舞台での演技が認められ、大学卒業後は映画にもよく出るようになっていた。最近では連続テレビドラマの準主役もやっており、人気はうなぎのぼりだった。
「ねえ、ハルナって今でも岩井さんがマネージャーやってる?」
「あ、やってるわよ」
「会わせてもらえないかな」
「…いいわよ。私は同伴できないけどいいかな?」
「もちろん。こんな大女優にセッティングしてもらうのは申し訳ないけど」
「大丈夫よ。もうセックスしてなんて言わないから安心して。そっちは間に合っているから」
「清純派女優がそんなこと言ったらだめだよ」
人間は変わるものなのか。それとももともと持っていた性質が年をとるにつれて開花していくのか。ハルナがさらに大胆で大きくなっている感じがiPhoneごしに伝わってくる。
僕は、明日渋谷19時に、岩井さんと会うことになった。
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