第42話 嘘と真
翌日から、僕ら3人は、ミキのために、自分たちが出来ることを1つずつやり始めた。
メグミは、トオルさんがミキの家の中に入ることを許すこと、トオルさんはミキを説得して、部屋の中を探偵に調査してもらうこと、そして僕は…岩井さんとの再会だ。
その夜、僕はハルナにLINEをした。
「急でゴメン。明日会える?」
「え、ああ明日はオフだから大丈夫だよ」
「あのさ、言いにくいんだけど、マネージャーさん連れてこれる?」
「なんで?」
「会った時に話す」
そう書くと、LINE通話の音がなった。
「なになになになに。どうして私のマネージャーと会いたいの?」
ハルナはかなりびっくりしている様子だった。やはりLINEのメッセージだけではおさまりきらなかったか。
「あのさ、どこから話したらいいのかわからないんだけれど…。
ハルナのマネージャーって結婚していたの知ってる?」
「あ、ああ。若い時に結婚してたってそういえば言ってたの聞いたことがある気がする」
「実は、その結婚していた元奥さんってさ子どもがいて、その子どもが僕の恋…ちがった、僕の死んだ兄の恋人だったんだ」
ーあぶねー! ここで記憶がなくなるところだった。となりでネズミも大きな目をしていた。
「ええ〜! そうなの。お兄さんって確かひき逃げされたとかって言ってたよね」
「そうそう。それで恋人も実はお腹をぶっすりさされて生死をさまよったんだよね」
「なにそれ!」
ハルナは興奮を隠し切れない様子だ。
「でさ、僕も岩井さんに実は2歳ぐらいのときに会ったことがあってね。どうしているのか少し気になっていたんだよね」
「ひえ〜、そうだったんだ。わかった。会わせてあげる。でも、この話先にマネージャーにしないほうがいいよね」
「そうだね。黙っといてもらっていい?」
「うーん、わかった」
なんとか、明日岩井さんに会う約束をとりつけることができた。
10時すぎ、トオルさんが職場から帰ってきた。
僕はいてもたってもいられなくて、下に降りた。
「夏休みなのにお疲れさまね」とメグミが背広をハンガーにかけている。
「ねえ、ミキ…さん説得できた?」危うく呼び捨てするところだった。あわわ。
「うむ」とトオルさんは難しい顔をした。
そして…Vサインをした。
「大丈夫だ、明日から監視カメラを置くことになった。どこにカメラを置いたらいいのか、色々セッティングしていたら遅くなったよ」
よし、これで部屋の中に侵入している犯人を突き止められそうだ。
23年前の犯人がようやく捕まえられる。僕はそんな期待で胸がいっぱいになった。
「僕は、明日岩井さんと会うことになったよ。ハルナからオッケーもらった」
「おお、よかったよかった!」
僕たちはハイタッチをした。
「あんたたち、すっかり仲良しね」とメグミが笑っている。
「トオルさん、明日頭を働かせないといけないからもう寝るね」
「そうか、おやすみ」「カズヤ、おやすみ」
僕は、すでに眠りについた姪っ子をちらっと見に行ってから、二階にあがった。
「神様、明日はついに岩井さんと再会だよ」僕はネズミ人形をぎゅうっと抱きしめた。
「アイタタタ、もう痛いよ〜」
「ねえ、明日気をつけたほうがいいことってある?」
「うーん、そうだね。よく耳をすますことだね」
「耳をすますって?」
「いきなり君に本当のことを言うと思うか?」
「あ」
な、なるほど。2歳の時に会っているとはいえ、ほぼ初対面に近い状態だ。それになぜ今になって僕が岩井さんのことをあれこれ聞くのか。そりゃ、警戒するよな。
「でもね、人間は全部嘘をつくってことはほとんどない。何か一つの嘘をつく。それが全部に影響して全部が嘘になるんだ。だから、一つの嘘がどれなのか、それをしっかりと聞き取ることだ」
「うーん、なんだか難しすぎて眠くなってきた」
「もう! おやすみ…」
本当は全然興奮して眠れなかった。だって岩井さんはミキだけではなくて、僕を殺した犯人なのかもしれないのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます