「また勇者が魔王になる奴?」そんな風に考えていた時期が俺にもありました

最初にこの作品を目にした時には
「また勇者モノか。しかも勇者が魔王になる系か。なんでみんな、こんな手垢がついたシチュエーションが好きなんだ」
「中身は社会人ハウツーをファンタジーに落とし込んだものか。こういう現代の概念をファンタジー世界でやるのも、そろそろありきたりになってきたよな」
なんて上から目線バリバリの考えを持ちながら読み始めました。
ところが実際に読み進めていくと、いい意味で予想を裏切られました。まずナメていた社会人ハウツーの部分が素直に面白い。ファンタジーへの落とし込み方が上手いのはもちろん、説明臭さを感じさせず、サクサクと読み進めることができました。
「そして社会人ハウツーを駆使して無事に魔王軍に就職できました」という無難な形で終わるのかと思いきや、後半は全く予期していなかった展開に。ネタバレを避けるためにここでは明言しませんが、きっとあなたの予想を裏切り、期待に応えることでしょう。

惜しい点があるとすれば、キャラクターの人数が多すぎて、それぞれのエピソードがあっさりと終わってしまったのが残念でした。もっとじっくり、一人一人にスポットを当ててほしかったです。

少し不満点にも触れましたが、それでも読み進める手が止まらなくなる魅力がこの作品にはあります。最新の章まで追いついた時には「あれ、もう終わり?」と思いましたが、よく考えたら既に文庫本1冊に近い文章量になるんですよね。それだけの文章量を読んでいるはずなのに、それを感じさせない、ワクワクが加速するような読書体験は久しぶりでした。このレビューを書いている時点ではまだ完結していないので、最後までこの勢いのまま走り切ってもらいたいです。