父親の海外赴任を機に、門川家に居候することになった高校一年生の京介。
しかし、そこには才色兼備の同級生である遥香が暮らしている。
クラスではぼっちで陰キャラである京介の突如始まった美女との同居生活。
「こんなおれがラブコメなんてありえない」と言いながらも、ツンツン美女とのラブコメな日常は転がり始める。
と、私は普段まったくラブコメなるものを読みません。
好きな作家は白石一文、重松清などです。
儚い「生」と避けることの叶わぬ「死」を『運命』という言葉に載せて描く物語に心が揺れる読者です。
本作に登場する女の子たちはみな個性的で、高校生らしい身の丈の浮き沈みが心地よい。
そんな素敵な女の子たちとの交流を通じて、人生をなかば諦めたような京介の魅力が訥々と明かされていきます。
文章は軽快で、ストーリー展開も読み手に苦労を強いるものではありません。
「この子は主人公のこと好きじゃないの?」「今の態度はヤキモチじゃないか?」
京介の目を通して垣間見る女の子たちの一挙手一投足にドギマギしながら、甘く苦い高校時代を思い返してしまいます。
私は、これがラブコメの王道かどうかを論じられる読み手ではありません。
しかし、「あぁー、この子と結ばれてほしいなぁー」と随所で読者に思わせることが創作の意図であるなら、本作は成功を収めています。
結末を迎える際、「こういう結論がよかったのに」と読者みんなで言い争いをしましょう。
ぜひお読みください。