11 お二人はあれですか?(2)
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「彼とは一対一で話したいんだよ。ほら、君がいると話しづらいかもしれないからさ」
残された真射は体育館の端に座り、衣装合わせなのかなんなのか、舞台上でファッションショーのようなことをしている演劇部員たちをぼんやりと見学している。
(……小影は男に興味があるのか、それとも小さい子が好きなのか……)
隣には今日も演劇部の新入部員、
(……私も髪型変えてみようかな……)
せっかく伸ばしているのだし、と自分の髪をさわっていると、
「あのー……」
雛多が遠慮がちに話しかけてきた。
「何」
横目で見やるが、彼女は特に物怖じすることなく、
「もしかしてですけど、お二人はあれですか……?」
「恋人?」
「違います」
即答だった。
「噂の『お祓い』してくれる人なのかなー、と」
真射は一瞬考えた。
(この流れはもしかすると)
『呪い』を解いてほしいという依頼をされるのではないか。もしも流れでその依頼を引き受けることになったりしたら、また小影になんと言われるか……。
「あ、でも」
雛多は人差し指を顎に当て、視線を宙にさまよわせてから、
「聞いた話だと、片方は『小さい人』で、二人で組んで仲良くやってるって……」
彼女がこちらを向く。真射の顔を見て、それから視線はゆっくり下がり、ある地点で止まった。そしてぽつりと呟く。
「小さい……」
「何が」
抗議の視線をぶつけるが、雛多はけろっとしていた。鼻歌を唄いながら、何事もなかったかのように舞台の方に顔を戻す。同じ一年でも
(教育が必要……)
真射は構える。人差し指をピンと立て、雛多に向けて伸ばした。そして優しい声音を心掛けながら、呼びかける。
「篠実さん」
「はい?」
雛多が振り返る。
――ぶすり。
「ぎゃあ……っ!?」
真射の指が雛多のお団子に突き刺さった。
「やっぱりこっちが本体だったか……」
「……何やってるの君は」
と、振り返ると小影が呆れた顔をして立っていた。どうやら将悟との話は終わったらしい。真射の隣では雛多が涙目になって今にも解けそうなお団子を両手で押さえている。まるで人に見られると恥ずかしいものでもあるかのような反応だ。そんな彼女を横目に、真射は素っ気なく呟いた。
「教育的制裁」
「後輩をいじめちゃダメじゃないかもう……。篠実さんにお願いしたいことがあったのに、君のせいで断られたらどうするの」
「う……?」
雛多が顔を上げる。
「なん、ですか……?」
「篠実さん、
「ぁぃ……」
ぐずっと鼻をすすってから、雛多は改めて「はい」と頷いた。
「お願いがあるんだけど――クラスでの綴原さんの様子を少し、教えてもらえないかな」
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