犬も歩けば棒に当たる

潮田 海

犬も歩けば棒に当たる

犬も歩けば棒に当たるなんて言いまして、犬だってせっかく時間通りに配達に来たのに誰もいないとなるとものやなんかに当たりたくもなりますね。え?違うって?それは失敬。

まぁそんなことはどうでもいいんでございます。

最近じゃ自動ブレーキが犬に標準装備されてるんだから世の中というのはたいそう進んでいまして、人に関してはGPS管理でこのまままっすぐ進むと横から人が飛び出てくるなんて注意が切れかけのネオンみたいにチカチカ主張するんです。犬畜生共にもそれができればいいんですがあいにくそれでどうするかという判断ができませんのでしょうがなく、あくまでしょうがなく無理やり動きを止めさせるんでございます。品種改良やらなんやらでそこそこ大きなものまで運べるようになったおかげで配達業界は人員削減、代わりに犬畜生共を雇用しての配達なんて普通のことになっております。どこそこに行けと命令を出せば獲物を狙うが如く全速力で走っていき、体格の小ささや小回りが利くのを良いことにさっさと配達を済ませて遊べ遊べとせがんでくるの姿は可愛くてしょうがないんです。

そんな彼らではありますが犬配達黎明期には全速力で向かうがためによく壁や同業者なんかとの衝突事故が絶えることはなかったんです。そこで登場するのが自動ブレーキ機能でございます。初期案はGPSだったのですが予測に対してなんら行動を起こそうともせず目に入ったところで反射神経と運動神経をフルに使った回避をするものでした。それでは安全性に問題があるということですでに使われなくなりこのまま忘れ去られるはずの自動ブレーキ機能が再び陽の目を見ることになったのです。

さて、配達は全速力で行い、その間はいくらスピードが出ていようとも勝手に止まるものですから配達をしない時、歩いている時なんかは止まることを忘れてしまってあちこちぶつかってしまう事が多発しているんです。そこからできたことわざが、

『犬も歩けば棒に当たる』

普段は自分たちが自発的に行わなくてもシステムとして機能してくれるものでもそれをシステムに頼らずとも実行できなければバチにも当たってしまうという話でございます。

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