第二節 街道。




 〝空の海〟には、〝街道〟と呼ばれる見えない通路が点在する。


 多くの万人は現実のみを享受し、ごく一握りの階層に座す領域にのみ、知らされている事実。

 それは、〝天貴人〟と称される「向こう側」の存在が、かつて〝空の海〟を移動する際に使用していた装置が、具現化する姿だった。

 

 特殊な領域にたどり着いたとして、その先に立ち入る事は叶わない。


 何故ならば、更に上の存在によって、発見、開拓、再起動、維持が厳切な盟約の上で交わされ、一度、経済圏内にて確認された〝街道〟は、それらの傘下と保護の元、不可侵とされる。


 更に上の存在とは、主に三勢力の上層部とされ、経済活動はもとより、文明を築く総ての要因に関わる、圧倒的な手段と物量を以て、


『公式経済圏』と銘打たれる世界を席巻していた。


 一つ、揺るぎなき覇権『グラーエン』


 一つ、不滅の堅陣『グランツァーク』


 一つ、姿無き『沈黙の市場しじょう


 三勢力は、均衡を保ちながら、節度良く莫大な利益を分け合っていた。

 

 ──無論、陽のあたる表面上は。





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