第18話 宴のあと
祭りの後には宴がある。これを思い出したのは、笛や鼓の音が聴こえてきたからだ。大きな鼓の音は、間を震わせ、斎の宮の私まで届いて、身体を震わせる。
まだ頭の中は熱を持ってふわふわと浮ついた心地だ。だけれど、装いを整えて、宴に備える。祝詞などはないのだけれど、私に貢物としてたくさんの供物が届けられるはずだ。
どんどん、と
斎の宮に籠ってからは身体が萎えがちなので、食べ物はしっかりと摂るようにしていた。特に肉だ! 猪や鹿の肉は美味いぞ! 油も赤身も良い。それとニラ! 肉に合う!!
端女が持ってきた
遠くの山奥からはキノコがやってきた。それにウドやゼンマイなど野に生える草。イナゴや蜂の子なども盛られている。我がクニでは虫はあまり食べなかったのだけれど、遠いクニのある所がこれをよく食べていたそうだ。虫を食べるのは恐ろしいと言われて幾度か貢物が退けられたことがあったけれど、今では食べるのが当たり前になっている。
テルセと二人だけで話ができる間があった。テルセがかしこまった面持ちで語りかける。
「トヨ様、あの、私キノコが嫌いなので、トヨ様のところに私のキノコを盛ってしまいました!」
「はあ」
確かに汁から溢れそうなほどキノコが入っている。
最もあとにもたらされるのが酒だ。コメから作る酒はコメを思わせる色と甘さ。大人たちはこれを飲んで大騒ぎ。心が大きくなって、時に、いさかいが起こる。殴り合いになる。歌い踊り、食べ飲み、疲れて眠る。心地良い穏やかな夜に、お外でお酒を飲むのはまことに楽しい。私も諸人に混じって楽しめればいいのだけれど……。
私が十日をかけても食べきれないほどの貢物。私が一度
もたらされたキノコは鮮やかな色をしていた。見たことのないキノコだ。ヒミコおばさまがクニを治めてから、ことに遠くのクニからも人やモノがやってくるようになった。このキノコも、干して遠くから運ばれてきて、今は汁物として私のところへ貢がれる。
ここからは、斎の宮にはだれも来ない。
身体に汁物が染みわたる。小さく啜って、味を確かめる。鹿の肉に手を出す。良く噛んで……美味しい!! 更にキノコの汁を啜って、猪の肉を食む。
どうだ、という心持だ。間違いなく神座を移した。大人たちは、もう私が《文字》を学ぶのを妨げないだろう。黙っておれ、ということだ。あははあはは。
酒に手を伸ばす。塩漬けの肴を嗜む。
快くなり、昔母から教わった古い歌でも小さく口ずさもうと思ったその時、目の
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