第17話 解明 ――その①

よせては かえし またよせて

それでいて、海はただ青く おだやかで・・・

歓喜のような絶望と、狂気のような安寧が、逆さまに反った地球の器を満たしてゆく。

僕らに襲い掛かってきた奴ら 僕の大事なものを奪い取ろうとした奴ら

そんな奴らはみんな消えてしまえばいい。真っ暗な水底で藻屑となり果てればいい。

この力はそれを可能にしてくれる。僕の願望を現実のものとしてくれる。


物陰に隠れていた連中の上体が水草のように浮いてきて、ふわふわと頼り気なく揺れる。

人数は4人だったらしい。いずれも黒いハイネックマスクで口元を覆っていて、顔はよく分からない。

(・・・ま、どうでもいっか。)

どうせすぐに朽ち倒れゆく者どもだ。顔など知る必要もないだろう。

指揮官に敬礼する隊員のように、彼らは揃って自らのこめかみに銃を押し当てた。

静かで、虚ろで

それは芹花さんの“力”が生み出す阿鼻叫喚の景色とは決定的に違っていた。

緩やかに侵食する清流がどこまでも透明で調和の取れた世界を構築し、広がっていく。


ああ、これだ、これこそが僕の求めていた有様だ。

誰も彼もなく、彼方も此方もなく、全てが1つだ。同じ結末に向かっていく1つの生命だ。


パァン!!


まず、1人目。

銃口と反対側の側頭部から、ブワッと赤い血柱が伸びる。

路面にまき散らされたモノは湯気を放ちつつ、路地の白化粧を溶かして広がった。


パァン!!


そして2人目。

その瞳には怒りや恐怖など欠片もなく、生理的な電気信号のみが、彼の末期まつごの表情を歪ませる要因だった。


パァン!!


3人目も続く。

銃声の織り成す規則正しいリズムは、この世の理を刻む雅やかな旋律。

破滅の交響曲を操るタクトは、確かに僕の手に握られていた。


パァン!!


彼らのうちの最後の1人が地に崩れ落ち、かくして、侵してはならない領域に踏み込んだ愚者たちの奏でる諧謔かいぎゃく曲は終演を迎えた。


そして・・・


(・・・あれ・・・?)

自分の側頭部に、ひんやりとしたものが押し当てられる感触。

黒い光を放つ冷えた銃口。それを頭に突き付けているのは、他でもない僕自身だ。

敵の力が解けたことにより自由になった筈の僕の右手が、銃が、再びこめかみに舞い戻ってきていた。


何をしているんだ? 僕は・・・


ぼんやりした意識のまま思考を巡らせる。

どこかに敵の伏兵が潜んでいて僕の右手を操った・・・というわけではなさそうだ。

そんな力は感じない。この手は、誰にも操られてなどいない。

つまりこれは僕が自分で動かしたということだ。

自らの意志で、その銃口を自らに向けたのだ。


考えてみれば何も不思議ではない。

僕は、サイトの力を発動させた。自分の“領域”を広げ、彼らをその内へと取り込んだ。

何もかも一緒くたになったまま、美しく滅びる僕の世界。

完璧な調和の中、今まさに粛々と死が具現化されている最中だったのだ。

ならば、その行きつく先はどこだ?

決まっている。今のこれこそが、この状況こそが、本当のフィナーレだったんだ。

ずっと欠けていた最後のピースなんだ。


ああ、そういうことか・・・


なぜ今まで気づかなかったのだろう。こんな単純なことなのに。

これが僕だ。これがサイトだ。滅亡に焦がれを抱く矛盾した一個の生命だ。

複雑に縺れた糸が、綺麗に解きほぐされていく。

僕の存在は、認識が不規則に絡んでいたからこそ生じた結び目のようなもの。

だからこそ、今この時、僕は消え去らなければならない。


引き金を捉えた指に、ぐっと力が籠る。


ようやくだ。やっと終わらせることができるんだ。





目を閉じ、天を仰ぎながら、僕はついにその引き金を・・・









「おいコラ龍ふざんなバカ何やってんだてめぇぇぇっっっ!!!!」









耳をつんざく怒号がアパートの棟々に反響した。

聞き慣れた筈なのに、妙に懐かしい芹花さんの声。


「お前がっ・・・お前が私を引き留めたんじゃねぇか!!そのくせに何勝手なことやろうとしてんだっ!?許さねぇぞっ!!」


ベランダを飛び越えた芹花さんが、こともあろうかこちらに向かって猛然と走り寄ってくる。

その後ろには、水那方さんまで付いてきている。太腿に巻いた包帯に血を滲ませながら、足を引き摺るように駆けてくる。


おい、待てよ・・・

そっちこそ何をやってるんだっ! 馬鹿はそっちだろ・・・っ!!


何のために僕が2人から離れたと思ってるんだ。

それ以上近付いたら、2人をサイトの力に巻き込んでしまう。

やっとの思いで芹花さんの命を繋ぎとめたのに、2人の危機を退けたのに、全部台無しにするつもりなのか?

馬鹿な。そんなことが許されてたまるか。


「うあああああああっっっっ!!!!」


パァン!!


放った銃弾は、雪雲に覆われた空の彼方へと吸い込まれた。

全身に満ちていた万能感は跡形もなく消え去り、刺すような寒さが肌に蘇る。

世界を侵食しながら完成しつつあった僕の内的宇宙は、もはやバラバラに雲散霧消してしまっていた。

元の状態に戻った僕に、それでも芹花さんと水那方さんは、勢いのまま飛びかかるようにしがみついてきた。


「龍っ!!龍だよな!?いつもの龍に戻ったんだよな!?もう大丈夫か!?馬鹿なことしたりしないか!?」

芹花さんの慌てた様子がなんだか可笑しい。こんな必死な芹花さんを今まで見たことがあっただろうか。

「無事でよかったよりうっち!!さあ早く止血しなきゃ!!」

水那方さんの言葉で、僕はようやく自分が脇腹に被弾していたことを思い出した。

凍える冷気を我慢しながら服をたくし上げる。

「・・・っ、つうっ・・・!!」

やはり弾丸は完全に貫通してくれていたようだ。

流石に疼くような強い痛みがあるものの、出血はさほどでもない。血液以外の何かが漏れ出している様子もない。

医師の診察を受けるまで予断はできないが、かなりの幸運に恵まれたと言っていいだろう。少しでも被弾個所がずれていたら即死も有り得た。

机のバリケードから飛び出すときは、多少の被弾くらい、と気持ちが大きくなっていたが、今思い返すとあまりの無謀さにぞっとする。


水那方さんに手当をしてもらいながら、僕は携帯端末を通じてディーネさんの車を呼んだ。

駐車場に入ってきた車の運転席には、すでに鉄真が乗っていた。

「こっちもついさっき終わったところだ。奴ら思った以上に手間掛けさせやがった。これ以上ダラダラはしてられねぇ。早く離脱するぞ。」

そう急かす鉄真の目が、僕らの肩越しに後ろのほうへと向けられた瞬間、彼の表情は俄かに怪訝なものへと変わった。


「・・・おい、何だ?そのガキは。芹花。」


一度アパートの部屋に戻った芹花さんは、その背に少女を背負っていた。

おそらくは操られ、芹花さんに銃を向けた少女。

惨事を免れるため、あの時僕はこの娘を撃つしかなかった。

その傷を覆う、肩と腕に巻かれた包帯には、水那方さんの太腿のものと同じく赤い染みが広がっていた。

応急処置によって、出血はどうにか押し留められているように見える。

にもかかわらず、少女の意識が戻った様子はない。むしろその肌は蒼白に支配され、事態の深刻さを窺わせた。

「急いでっ・・・急いで病院に寄ってくれっ!!」

芹花さんの懇願のような言葉に、鉄真は呆れと蔑みの籠った視線を投げる。

「馬鹿か!そんなの通るわけねぇだろ。そんなガキどっかに捨てとけ。病院に連れ込むとかわざわざ足の付くような真似ができるかよ。」

鉄真の返答はもっともだ。

無関係の事件に巻き込まれた不幸な少女ではあるが、無関係だからこそ、その救護のために組織を危険に晒す行動をとるなど許可されないだろう。

だけど、だからといって、この娘を見捨てることが僕に許されるのか?

僕が・・・僕が撃ってしまった娘なのに、単なる不幸で切り捨てるのか?

「頼むっ!お願いだから一緒に乗せてくれ!責任は全部私が取るからっ!」

涙目になって、駄々っ子のように縋る芹花さん。

その肩に乗った少女の顔に、僕は見覚えがある気がした。

気のせいか・・・? いや、でも、どこかで・・・


「・・・・・・っ!!!!」


突如として蘇った記憶に、言葉を失う。


あの娘だ・・・!!


寂れた裏通りに漂う湿っぽい排気口のにおいが脳裏に立ち返る。

いつか芹花さんとミッションの情報収集をしていた時、ベトナム人の情報屋に会う直前にすれ違った少女・・・薬に侵され、虚ろな目を宙に漂わせたまま歩き去った、あの憐れな少女だ。

短い邂逅だったが、それが僕の記憶に刻まれていたのは、僕がそのとき“力”を使って彼女の心に触れたからだ。

悲惨だった。薬物の恐ろしさを初めて実感として思い知った。

少しでもこの娘の助けになれないか・・・そう思った。

その娘が、今こうして僕の目の前にいる。

そして、他でもない僕の手によって、その儚い命を奪われようとしている。

途端に、強烈な吐き気が込み上げてきた。


そんな僕の心中などお構いなしに、目の前では妥協点の見えない口論が繰り広げられていた。

「ダメだって言ってるだろ。保護の指示が出ている“民間人”はお前だけだ、芹花。今すぐそいつを捨てるんだ。」

「頼むっ!鉄真!!早くしないと手遅れになる!私のことはどうでもいいんだ。こいつだけでいいから連れてってくれっ!!」

全く会話の通じない芹花に、鉄真は観念したように息を吐いた。


「・・・分かったよ。」


意外な返答に芹花さんが目を輝かせたのも束の間、鉄真は不意に銃を抜くと、その銃口を芹花さんに向かって突き付けた。

(・・・っ!?)

咄嗟に銃に手を掛ける僕。

成り行きを見守っていた水那方さんの顔にも俄かに緊張が走る。

「ちょっと待ってマーくんっ!何するつもりっ!?」


「別に大したことじゃねぇ。そのくたばり損ないのガキが気にかかるってんだろ?

だったら俺が心残りのないようそのガキをこの場で始末してやるよ。」


鉄真の冷徹な声が僕の背筋を凍り付かせた。

芹花さんは青ざめた顔で、必死に声を張り上げる。

「やめろっ!!そんなことしたら許さねぇぞ!!その時は私がお前を殺すっ!!」

その激昂する様子を射抜くような目線で捉えていた鉄真の顔が、どす黒い笑みで歪んだ。

褐色の瞳には、狂気の炎が揺れているように感じられた。


「いいだろう。やってみろよ。やれるもんならな。」


凄まじい緊張感に満たされ、窒息しそうなほどに凝固する空気。

「ちょ、ちょっと!やめようよ2人とも!

僕に1つ案があるんだ。だから先にちょっとそれを聞いてよ!」

僕は意を決して口を挟んだ。

3人の視線がバッと一気にこちらを向いて、思わずごくりと喉が鳴る。

だが、怯んでいる場合ではない。


ディーネさんの車に乗ってここに来る途中、僕は窓の外の景色が微妙に気になっていた。

その理由に思い当たったのは、ついさっきのことだ。

僕はこの辺りに一度来たことがある。それも、BCLに入る前に。


「こ、この近くに僕の知ってる病院があるんだ!そこにこの娘を連れてくってのは・・・どう、かな・・・」

その提案を聞いた鉄真が、いかにも呆れ返ったような声を上げた。

「はあぁぁっ!? だから病院になんか連れていけるワケねぇって・・・」

「ただの病院じゃない!闇医者の病院なんだ!外から見たらホント普通の民家にしか見えないし!」

そう、ここは、あの人の・・・涼子ちゃんの母親、神谷要女先生の病院の近くなのだ。

「ほらっ、闇医者なら足も付かないだろうしっ! この娘を連れてっても、問題は・・・」

「アリだよ、大有りだ。どこの奴とも知れない闇医者なんて余計危ねぇよ。俺らの情報が売り捌かれないとも限らねぇだろ。」

運命を感じる巡り合わせが何かの突破口にならないかと提案してみたが、やはり苦しいか・・・

しかし他に妙案もない。今はとりあえずこれで押すしかない。

「大丈夫!すごく信頼できる人だから!僕が保証する!」

「お前の保証なんかがアテになるかっ!いい加減にしろよお前らいつまでもウダウダと・・・俺らがやってるのはママゴトじゃねぇんだ。すぐに済ますからお前はどいてろ!」

「ま、待って・・・分かった!アレクさんに判断を仰ごう!」

いかにも苦し紛れの提案を重ねる僕。

「ちっ・・・ああ、いいぜ。それでダメなら納得しろよ。もうこれ以上は譲らねぇからな。」

しかし鉄真は、案外すんなりとそれを受け入れた。そんな要望が通る訳ないし、かえって早く決着をつけられると考えているのだろう。そしておそらくそれは正しい。

「・・・う、うん・・・」

それでも今はこれしか縋るものが無い。あるかも分からない可能性に賭けるしかなかった。


僕は、携帯端末の回線をアレクさんに繋いだ。

「こちら、龍輔。敵エージェントの排除および薄野芹花の保護を完了しました。これより帰還します。

えっと・・・帰還に際して、1つ、判断を仰ぎたいことがあるんですけど・・・」

回線は鉄真と水那方さんにもオープンになっている。

僕はできるだけ手短に、少女のことをアレクさんに説明し、受け入れてくれそうな病院に心当たりがあることを伝えた。

話をしながらも、これがにべもなく却下された場合にどうするか、なにか次の策がないか、僕は必死に頭を巡らせていた。


『・・・了解した。とりあえず今すぐその少女とともに現場を離脱しろ。龍輔、お前の提案は研究者サイドに上げておく。

鉄真、離脱ルートは当該病院の傍を通るように調整しろ。』


自分で提案しておきながら、その返答は全く予期していないものだった。

僕らは一様に驚きの表情を浮かべた。中でも鉄真は、まるで信じられないといった面持ちだ。

「・・・はぁ!? おいおい冗談だろ。なんでこいつらの我儘に付き合わなきゃいけねぇんだよ!お前、自分の立場分かってんのか?それは本当にイグザミニーズ副長としての指示なんだろうな!?」

食いかかる鉄真に対し、アレクさんは微塵の動揺もなく言い返す。

『もちろんだ。お前も敵の排除に時間掛けすぎなんだよ、鉄真。そろそろ警察が駆けつけてもおかしくない。どこの組織にも属してない民間人の遺体なんぞが連中に収容されたら後始末が厄介だ。分かったら少女を一旦確保しておけ。いいな?』

いかにもアレクさんらしい隙のない論法に、たじろぐ鉄真。

「・・・くっ、この野郎・・・っ!」

一定の筋が通っているだけに、それ以上の反論の言葉を失う。

「さあっ!話が纏まったからには早く移動するよ!

りうっち!せりりんと一緒にその娘抱えて後部座席に乗り込んで!」

絶妙なタイミングで掛けられた水那方さんの声に、僕らは弾かれるように車へと乗り込み、死のにおいが立ち込める駐車場を後にした。



日が傾き薄暗くなり始めた街中を疾走するライトグレーのモーターカー。

後部座席、僕と芹花さんの並べた膝の上に、少女は横たわっていた。

意識は未だ戻らない。

時折、苦しそうに眉をひそめながら喘ぐ度に、芹花さんがその手を握って、「おいっ!しっかりしろ!」と声を掛けている。

バイタルサインは一応確認できるものの、脈がかなり弱まっており、いつでも蘇生措置に入れるよう神経を尖らせる必要があった。

一刻を争う容体だ。とにかく早く病院で本格的な処置を受けさせなければならない。

肝心の病院をどうするかだが、アレクさんに預けていた提案の回答は意外に早く、しかも拍子抜けするくらい僕らに都合のいいものだった。

『龍輔クンから提案のあった病院の件、そこに立ち寄っていいと許可が出たぞ。ついでにお前らが作戦中に負った怪我もそこで治療を受けるようにとのことだ。』

それを聞いた鉄真は、もはや訳が分からないといった様子で頭を横に振る。

「おいおいおいおい!マジで言ってるのか!?アレク。気は確かか?こいつらのタワゴトに付き合いすぎて脳がやられちまったんじゃねぇか!?」

『オレじゃない。研究者サイドの判断だ。彼らがそう結論付けたからには、その闇医者とやらの情報を何かしら把握してるんだろうさ。』

研究者側にどんな思惑があるのかは分からない。だけど、今はこの子が助かることが全てだ。


車が路地を1つ折れるたび、既視感が徐々に強まっていく。

もうすぐだ、もうすぐ着く。頼むからそれまで持ちこたえてくれ。


やがて車は、一軒の民家のもとへと辿り着いた。


「ここです!ここがその病院ですっ!」

駐車の間も惜しんでドアを開けた僕は、芹花さんと一緒に少女を抱えて車を飛び出した。


ピンポーン ピンポーン


「要女先生!!いますか!僕です!白峰です!!」

『は~~~い、まったく騒々しいこと。話は聞いてるから、勝手に玄関開けて入ってらっしゃい。』

インターホンから聞こえてくる懐かしい声に少し心が落ち着く。


ガシャッ!!


ドアを開けると、ちょうど要女先生が上り框の手前まで出てきてくれたところだった。


「お久しぶりね。」


ああ、要女先生だ。本当に先生が目の前にいる。

僕が初めてサイトの“力”を使ったとき、この人がいなければ、僕は壊れていただろう。

僕を救ってくれた恩人だ。今回も、この人がいれば、きっと・・・


「お久しぶりね、2人とも。」


(・・・え・・・?)

“2人とも”?

僕はともかく、芹花さんも要女先生を知ってたのか?

いや・・・でも、この病院のことなどまるで知らない様子だった。

じゃあ、ここ以外で会ったことがあるということなのか?

頭に疑問符を浮かべつつ傍らを見やると・・・


そこには、ありありと驚愕を浮かべたまま固まった芹花さんの顔があった。


(な・・・っ!)

何なんだ、この異様な驚きようは・・・?

要女先生がここにいるのが、そんなにおかしなことなのか?


ガチャッ


「りうっち!どう?りうっちの言ってた闇医者サンには、会え・・・」

追い付いてきた水那方さんと鉄真も、要女先生の顔を見るなりピタリと動きを止める。

対する要女先生の口元には、どこまでも穏やかな笑みが浮かんでいた。


(・・・なんだ?これ・・・)

どういうことなんだ?

全員、要女先生を知ってたってことか?・・・芹花さんも?水那方さんも?鉄真も?

そんなことがあり得るのか?

一体、何が起こってるっていうんだ・・・


「おい、龍輔。なんでコイツがここにいる・・・」


鉄真が零した疑問に、しかし僕には、要女先生がここ以外のどこにいるのが正解なのかさっぱりなので、答えようがなかった。

「そんなこと言われても・・・一体、要女先生が何だって・・・」


「そいつは・・・」



僕の疑問を遮るように鉄真が言葉を繋ぐ。














「ドクター神谷要女・・・そいつは、BCLの所長だ。」



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