第18話
セイント軍とガルカス軍の部下たちの戦闘はもう始まっている。一方俺たちは時が止まったかのような静寂の中にいる。ギザルの動きを見逃さないよう目に力をグッと込める。
―来るっ。
「そんなにじーと見つめていなくてもいいだろう。ほらいくぞ!」
大剣をこちらの方へと傾ける。何か物々と言葉を発している。
「音速撃スピードバースト」
俺は自分の目を疑った。ギザルがマッハの速さで突撃してきているのは分かるが、剣が全く視界に移ってこない。
「下がれ二斗君!」
後ろから聞こえるのはキグナスの声。俺はほんの数歩後ずさりする。
「瞬間移動テレポテーション」
キグナスの杖は的確にギザルの剣を捉えていた。石同士を擦らせたかの様な大きな摩擦音が響く。
「さすがだな、キグナス」
ギザルの剣は背中の鞘へと戻っていく。
剣の位置から察するに、俺が心臓を刺されていた事が目に取れる。キグナスに助けもらわなければ確実に死んでいた......
「大丈夫かい?」
「ああ。助かった」
俺は、透明イミテーションを使いギザルの後ろへと回り込む。
「てめぇの動きは丸見えなんだよ」
ギザルの剣が火を噴く。キグナスの援護がすかさず入る。
「喰らえ冷気刃斬フリーズブラスト」
ギザルは無数の氷の矢を相手にするのに手こずっている。おそらく、今の奴の死角から攻撃すれば致命傷を与えられる。俺は剣を振りかざす。
「はぁっ」
死角を捕らえたはずの俺の剣は弾かれてしまう。
「甘いな。まだまだだよ」
大剣を片手で振り回しているだと......こいつの力の強さが滲み出ている。さすがはボスと言ったところだな。見事に全ての矢を弾いている―ところか跳ね返している。なんて奴だ。2対1でも歯が立たない。
跳ね返った矢は向きを変え、俺たちの方へと向かってくる。
「次元閉鎖ロックド・ディメンション」
氷の矢は、別次元へと飛ばされていく。こんな使い方もあるのか。
「たいしたことないな」
ギザルは見限るかのように軽蔑の目で言う。
「そろそろおわりにさせてもらおう」
ギザルの周りには炎が集まっていく。あれでは近づくと危険な状況だ。
「火炎斬フレイムハザード」
大剣からは、一直線上に伸びる炎の柱。振り下ろした直後には俺の身体は炎に包まれていく。
「うあああ。熱い......!」
皮膚の焼けるにおいと、自分の身体の暑さで正気ではいられなくなっていた。汗をも蒸発させている。
「冷気刃斬フリーズバースト」
氷の刃はギザルの炎へと消えていってしまう。
「二斗君を死なせはさせない。超級回復グレイテストヒール」
セリナの回復で一命を取り留めたものの、身体中のやけどでヒリヒリする。
キグナスも、ギザルには迂闊に近づくことが出来ない状況にある。どうすれば、隙を作ることが出来る、考えるんだ俺......
ーー
俺はようやくある答えにたどり着く。これは賭けだ。上手くいくかどうかわからないがやってみる価値はある。
「キグナス!......」
作戦内容を大雑把に説明する。キグナスのグッジョブを受け取った俺は行動に移す。
「喰らえ冷気刃斬フリーズバースト」
「それは、効かんのだよ。何度やっても同じだ」
ギザルの呆れた表情には目を眩まない。
周囲には細かい氷の刃が出現していた。細かな氷の刃は一つの刃へと集中して行く。塵も積もれば山となるとはよく言うもんだ。小さな氷の刃は、見る見るうちに姿を凶暴化させた。
「いっけええ!」
俺の合図を確認するとキグナスを杖を振り下ろす。凶暴化した氷の刃は、ギザルの方へ一目散に飛んでいく。ギザルの炎に一瞬ではあったが、隙間が空いた。俺は透明になり隙間へと潜り込む。
「でやぁ」
木刀がギザルのお腹を捕らえた感触がある。
「ぐはっ」
ギザルは口から血を吐いたものの、倒れはしていない。だが、ダメージが大きいためか、周囲の炎が除久に弱まりつつある。
「私の新技を見せてやろう。電撃の鉄槌ライトニング・アース」
キグナスの上空には、ドス黒い雲がたくさん発生している。雲から稲妻がギザルの頭を目がけ向かう。
「ぐああ」
ギザルはたって入られなくなり、ゆっくりと倒れる。
「俺達は、ギザルを倒したんだ」
実感がわいてこないが、おそらくそうであろう。ガルカス軍の部下もこの状況を見て、退散していく。
「キグナス、ギザルはどうする?」
「こちらで身柄を預からせてもらおう」
そう言うと、ギザルを棺おけに入れセイント軍の部下とともに動き出す。
「悪いが、しばしのお別れだ。二斗君、セリナ王女2人ともうまくやっておくれよ」
キグナスの突然の脱退表明を聞いた俺達は、また2人になってしまうのだった
ニートの俺。異世界に行きます @miyapon0617
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