ヒトリゴト

紀伊 啓太

目覚まし

いつも見ているこの世界 すべてが僕の理想でできているんだ

けれど何かひとつ足りない それがわからないままでいた

僕を今日も君が起こす そのぬくもりは僕の世界にはなくて

君の見ている世界にも 僕のぬくもりなんてないんだろうけど


「おはよう」その言葉が尊くて なぜか届かないところまで来てるんだ

僕の居場所はまぶたの裏の真っ暗闇に すべて吸い込まれていったよ


僕の世界が壊れてく 君に会うたび壊れてく

理想がどんどん膨らんで 現実が僕を踏み潰す

社会から僕が消えていく

ああ なぜ なぜこんなことも わからないのだろうか


僕の世界を支配する幻想は 君が怖いらしい

君が僕に送るおはようが 痛いみたいだけれど

今日も君の夢を見るために 目を瞑る


いつまで待っても君は来ない

なぜなぜいつもなら 僕のほおに君の手が触れるはず

それも幻想だったって言うのかい?

現実よ 教えておくれよ

夢と社会の境なんてないんだろうけれど

僕はずっとそこをフラフラしてて

もうなにもわからない


「おはよう」その言葉が尊くて 届かないところまで来てしまってた

もう手遅れさ ああもういっそ誰でもいい誰かいるなら

僕の目を覚ましてくれ


僕の世界から

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