最終話 お空の向こうへ

 チビ助のお葬式が行われました。家族だけでなく町中の人がお別れにきました。もちろんドラゴンもです。


 お葬式が終わった翌日もそのまた次の日も、ドラゴンはチビ助のお墓の前を離れようとしませんでした。町の人たちは、ドラゴンとチビ助が本当に仲良しだったことを知っているので、しばらくそっとしておいてあげることにしました。




 七日目の綺麗に晴れた朝、それまでうなだれていたドラゴンは、空を仰ぎ見ました。そして意を決したように、空にむかってまっすぐ飛び立っていったのです。



 ドラゴンは空の向こうにある天国を目指して飛び立ったのです。

 まっすぐ高く、それはもう高く飛びました。何時間、いえ、何日も飛び続けたかもしれません。あれだけ立派だった翼はもうぼろぼろです。



 チビ助、チビ助……



 何度チビ助を呼んだことでしょう。もう声も出せなくなってしまいましたが、心のなかで呼び続けます。


 体中が悲鳴をあげていますが、そんな痛みなんかより、チビ助がいないという痛みのほうがずっとずっと耐えられなかったのです。もう、目も霞んでほとんどなにも見えません。そのかわり、チビ助のことを目一杯思い描きました。


 チビ助と過ごせた時間は、長く生きてきたドラゴンにとっては、とても短いものでした。たくさんの思い出があったのでしょう。そのどれもが、とても輝いていました。かけがえの無いものばかりです。



 チビ助、チビ助……



 ドラゴンは、それほどまでにチビ助が大好きなのです。





 

 小さな町に小さなパン屋がありました。


 その昔、パン屋にはドラゴンと友だちのチビ助と呼ばれていた人がいました。


 チビ助が天国に旅立って、後を追って飛び立ったドラゴンの最期は誰にもわかりません。それでも、町の人たちはドラゴンは天国にたどり着いて、一匹と一人の友だちは、いつまででも天国で仲良く暮らしていると知っています。




 大きなドラゴンと、小さな友だちは、ずっと友だちで、これからもずっと友だちなのです。

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ドラゴンと、パン屋のチビ助 笛吹ヒサコ @rosemary_h

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