決戦魔神パズズ
教祖を吸収したパズズと、神の力を手に入れたオトノハの勝負が始まる。
「死ねい!」
パズズの手から紫の瘴気が噴き出す。疫病まじりの炎みたいだが、オトノハの操る聖なる気が浄化していく。
「効かないよそんなもの!」
「なんだと!?」
「お返しだ! ゴッドクリーナー!」
さらに光り輝く神格が病気をかき消していく。空気清浄機の内部みたいだな。
「ゴッドクリーナーはみんなの健康を守ります。当社比99%の抗菌効果があるとオトは思ったのです」
「うさんくせえCM始まったぞ」
「ゴッドブレイジングストライク!!」
オトノハの両手に集まった生命力が一直線に飛んでいく。暴力的なまでに溜まった浄化のエネルギーは、悪しき者にとって劇毒である。
「うがあああぁ! 小娘ごときに負けてなるものか!!」
「オトノハダブルニー!!」
両膝を合わせて突っ込んでいく。こいつ近接戦闘多いんだよな。フランあたりがやめさせそうなもんだが。
「ああ……自分から敵に近づいたりして……でもかっこいいわよオトちゃん!」
フランにも葛藤があるらしい。身内の女の子にやって欲しいことじゃないよな。
「人間ごときが……神のスピードについて来られるものか!」
光速の数十倍で動いているが、パズズのビームはすべてかわされ、上空からオトノハの肘が入る。
「シャイニングエルボー!!」
「ぐがあぁぁ!?」
神殿もパズズの脳も激しく揺れる。脳が揺れても神なら気絶しないが、地味に面倒だろう。
「おのれ生意気な! ちょろちょろ逃げ回れないようにしてやる!」
パズズの全身から瘴気が吹き出して地下を覆っていく。オトノハは全方位攻撃にさらされるとしんどいのだ。元々強いエルフってだけだからね。
「いけない……みんな大丈夫!?」
「俺達は無傷だ」
「……逆になんで平気なんですか?」
「下級神ごときの攻撃が効くわけないだろ」
「くっ、この程度で超人が屈するものか……」
ヒジリさんに地味にダメージが入っている。敵味方の強弱がよくわからなくなってきたぞ。
「ヒジリさんは外の信者でも殺してきてください」
「オトノハ様から離れるわけには……」
「俺達でどうとでもできます。やつの攻撃は人間じゃ特別な覚醒でもしないと無理ですから、気負わず逃げてください」
ここで死人出たら俺の観光計画台無しだろうが。とっととどっかいけ。
「負けない……私はネフェニリタルを背負ってここにいるのだ! うおおおぉぉぉ!!」
ヒジリさんが聖なる光でパワーアップした。このタイミングで?
「アジュさんの言う通りだった。覚醒すればなんてことはない。自分の可能性を信じること、つまりそういうアドバイスだったのですね!」
「えぇ……」
なんか勝手に覚醒して勝手に納得された。そしてパズズに切りかかったヒジリさんは、見事に剣が折れた。
「なんですと!?」
「めんどくせえなもう!」
ヒジリさんを教徒の武装集団へと案内しておく。ザコ散らしには最適なんだよね。あとはオトノハに任せたいんだが、どうやらパズズがこっちに来るようだ。
「お前も目障りだ!!」
「やかましい」
攻撃を叩き落としてボディーブローを入れる。
「おごお!?」
「お前の相手は」
顔、腹、足に蹴りの連打を浴びせたら、パズズの頭を掴んで投げる。
「オトノハがする!」
投げた先ではオトノハが迎撃体勢に入っていた。
「ネフェニリタル式ドロップキック!!」
「ぬごををああああ!!」
「いいわよオトちゃん! そんなの聞いたことないけどかっこいいわ!!」
「ありえん! ありえんのだ! 今度こそネフェニリタルに引導を渡す!」
パズズの瘴気が消え始めていた。やはり浄化され続けた心臓と教祖では無理だったか。オトノハが倒しておしまいっぽいな。
「パズズ様が苦しんでいる! 今こそ我らの信仰が試されるとき!」
「そうだな。ほらほらもっと真剣に祈れ。殴られたくらいで祈るのをやめるんじゃないぞ」
信者を気絶しない程度に殴り続けよう。なんか汚いしまとめて蹴り飛ばして壁際に寄せたりもするが、いかんせん数が多いのだ。というか地下が圧倒的に広いぞ。
「お前らの神がボッコボコにやられるのはなぜだろうな? こんなん崇めていたとか恥ずかしくないのかよ。神も信者もだっせえな。所詮カルトなんぞ人間もどきのクズしかいないか」
「黙れ! パズズ様が完全に復活していれば、貴様らになぞいいようにされるものか! まだ本気ではないだけだ!」
それを聞きつけたのか、パズズがオトノハから離れて信者に向かう。
「お前達の力を……力をよこせえええええ!!」
パズズの全身からヘビが飛び出し、信者の首に噛みついた。
「あっ、があ……」
「これで……ひと……つに」
信者達は抵抗の意思を見せずに食われていく。そして生体エネルギーはすべてパズズのもとへ。
「もっとだ……もっと……世界中の信者よ! 今こそ我の役に立て!!」
天井に大穴を開け、カルトな連中の魂を集めているようだ。
「やっば、止めないと!」
「いや、このままやらせよう」
「どうして!?」
「このまま全世界の信者を飲み込ませるんじゃよ。カルトなんぞ滅ぼすに限るじゃろ。一気に消せるなら計画通りじゃ」
鎧と剣で紐づけ斬りして信者全員を殺すつもりだったが、本人がやってくれるなら都合がいい。さっさとお掃除して帰ろう。
「くははははは!! これでいい! これこそが神!! これこそが我!!」
より禍々しいデザインへと変わり、不気味な生物を肉塊にぶち込んだみたいになる。表皮がブロックみたいだし、宇宙で倒したあいつらのようだ。邪神は強くなると人っぽさが減るんだな。
「さあ、まずはネフェニリタルの王族からだ! 神の名のもとに滅せよ!!」
黒い雷が無数に襲来するが、オトノハはその中をくぐり抜けるように進んでいく。
「バカが! いつまで避けられるかな!」
「無理なら無理でやってみせる! やっと、やっとできたオトの出番なんだ! やっとお姉ちゃんを助けてあげられる! あなたなんかに負けない!!」
空中ではあらゆる角度から雷撃が飛んでくる。ある程度かすっていくのは承知の上で突っ込んで活路を開くようだ。
両手に溜め込んだ聖なる闘気を解き放ち、覚醒パズズを壁へと叩きつけた。
「これが新奥義、シャイニングマックスボンバー!」
「シャイニングさっき言ったぞ」
「マジですかぃ!? うむむむ……」
「一気に技を増やしすぎるとそうなるのだ」
「どうでもいいからさっさと倒すのじゃ」
敵信者が全員取り込まれたので、みんな暇なのだ。ちなみに財宝的なやつはもう探し終わってはじっこに置かれている。
「おのれ……どこまでも邪魔をしおって! 貴様らさえいなければ!」
「そっちこそどうしてネフェニリタルを狙うの! 心臓を奪われたのだって、そっちが攻めてきたからでしょ! 原因はなんなのさ!」
そういや明確な理由は知らんな。ここで聞いて安心しておこう。
「緑豊かな地の横で、たいした旨味もない土地の神になり、疫病で領地を広げることもできぬ神の心が理解できるか! あてつけのように浄化の力など持ちおって! 侵略すらできず眺めているだけの屈辱がわかるか!!」
「えぇ……普通にゲオダッカルを治めればいいだろ。いい神にでもなれよ」
「マナ様と仲良くすればいいじゃん! 他の神様だっていたでしょ!」
「黙れ人間! 我は太古よりの神! 疫病を操り恐れられる恐怖の象徴! 後付けの土地神などと仲良くなどできるか!!」
ただの自己中なザコやん。弱いんだからそうするしかないだろ。
「お前が全部悪い。もっと言うと弱いのが悪い」
「強くてもダメですからね?」
「ネフェニリタルさえ手に入れば、我が願いは成就する。王族を絶やし、病魔を広め、今度こそ王刃の一族に鉄槌を!!」
「よく考えたら普通にご先祖様に負けとるんじゃな。神の中でも弱いじゃろおぬし」
葛ノ葉は特殊すぎる超天才の家系だが人間だ。ラーさんの血があっても純粋な神ではない。それでもこいつは普通に負けていそうなんだよね。
「弱いかどうか確かめてみろ! この国の無様な歴史ごと消してくれるわ!!」
天井の穴から神格が結集してエネルギーの玉となる。どうも国ごと消すつもりらしい。其の程度には強いんだな。
「負けない! オトの全力をぶつけてやる!」
「オトちゃんだけが背負う必要なんて無いのよ。私もやるわ」
エネルギーチャージ中のオトノハに歩み寄るフラン。姉妹の手が重なり、膨大な生命力が集う。
「この世界の生きとし生ける生命よ」
「平和と自然を愛するみんな」
「どうか今この一瞬だけ、その力を分けて」
パズズとは真逆の聖なる力が暖かさを称えて灯る。優しく包み込み労るような神秘的な力は、姉妹の手の中で輝いていた。
「無駄だ! 我は純粋なる神である! 人間ごとき雑種混じりの力で勝てるものかああぁぁ!!」
「負けない! みんながいるから!」
「飛んでいけえええぇぇ!!」
空中で光と闇の力が激突する。凄まじい光と暴風が場をかき乱し、荒れ狂う怒りと生命力が押し合いを続けていた。
「邪魔をするなあああぁぁ!!」
パズズの体から大蛇が飛び出す。数十の毒蛇が火を吐きながら迫っていくので、すべて斬り飛ばして破裂させた。
「邪魔はこっちのセリフだアホ」
「なにいぃぃ!?」
「今よオトちゃん!」
「うりゃああぁぁぁぁ!!」
余計なことをしなければ拮抗したままでいられたかもしれんのに、そういう小賢しさがお前の敗因だ。
「こんな……神が敗れるなど……うああああぁぁぁ!!」
光の粒子がパズズの全身を浄化していき、ついに魔神は完全消滅した。後に残るはエルフの姉妹と俺達だけ。
「いやったああぁぁ!!」
「立派よオトちゃん。さすがは私の妹ね」
「お姉ちゃあああぁぁん!」
仲良く抱き合う姉妹を見ながら、パズズの滅びを実感したのであった。
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