戦うイケメン中編コンテストに外伝小説を投稿開始しました。読んでください
謎の船に乗り込んだ俺達は、そこで狂った船員に遭遇。なんとか撃退して船長室へ。そこには手がかりがあるといいなあ。
「それじゃあ警戒しつつ各自で捜索してくれ」
「了解!」
窓際の大きな机でも探そう。あまり傷がついていない。これ木製じゃないな。かなりがっしりした硬い素材だ。警備兵さんも困っている。
「鍵がかかっていますね。頑丈な素材だから、壊すのも難しい。中に何があるかもわかりませんので、手荒に扱うわけにもいきません」
「面倒だな。鍵ありそうか?」
「船の中は荒れていたわね。ちょっと探すのは難しいわ」
「んじゃ開けよう」
鍵穴に人差し指をあて、まず魔力をごく微量流し込む。そのまま流し込んだ魔力を皮膚一枚くらいの魔力の壁に変換。鍵の形にしたら、内側を質量持たせた雷で満たす。くるっとひねれば御開帳。
「よし」
失敗すると雷でバチッといって鍵穴が焦げる。最悪壊れる。だからたまに南京錠とかで訓練しているのだ。こういう状況や、手足が拘束された場合に鍵を開けられるのは、絶大なアドバンテージである。
「……まってまってまって。今のどうやったの?」
「魔力で鍵を作った」
「説明を求める」
「捜索をしろ。説明とか苦手なんだよ」
俺に集まるんじゃない。仕事をしろ。よくわからんけどなんとか説明してみた。
「…………できるわけないじゃないそんなの」
フランが呆れ顔だ。俺が異常扱いされるのは絶対におかしい。ここは抗議ポイントですよ。
「嘘つけこの野郎。魔力を流したりすりゃいいんだよ。質量持たせろ」
「それがもう厳しいのよ。大雑把に大量に出すならともかく、鍵穴なんて小さいものに一定量の魔力を流して、そこから固定なんてできるわけないじゃない」
「ギルメン全員できるぞ」
手段は多少変わるだろうが、似たことは三人ともできるはず。まず魔法の分野で俺にできてリリアにできないことはないはず。
「アジュくんの自己評価が低すぎる理由の一端を見たわね」
「国王様クレイジーマジシャンなんですね」
「変な異名をつけるな給料減らすぞ」
「すんません捜査に集中しまっす」
さて机の中には書類の束と……日誌ゲット。いいぜいいぜ。ちょっと運が向いてきたかもな。早速開けて読んでみる。
「最初は普通の記録だな。というかこの国ができて数週間だし、まだ日誌が少ない」
日誌には普通に航海が綴られている。ある日商人が訪れ、酔い止めなどの薬を売り込んだ。登録があやふやなものが混ざっていたので拒否。お近づきの印にと変な像を置いていった。薬は数人の船員が買っていたらしい。
「こいつ……もろに怪しいな」
商人の名前と買ったものの帳簿もあるようなので、ひとまず進展はあったな。
「あからさますぎないかしら?」
「怪しい像がないか慎重に探してくれ」
「了解!」
俺達は日誌を読み続けよう。船員が怒りっぽくなったのが三日前。事故で頭から出血していた男が笑いながら平然としていた。昨日になって暴れだす船員が増えた。止められない。自分もおかしくなる。といったことが書かれていた。
「感染源の特定ができん」
敵は思ったより賢いらしい。これはうざい。
「薬じゃないの?」
「だとしたら狂っていた人間が多すぎる。数人が買って何十人も暴れる理由がわからん。ゾンビ映画か」
「なにそれ?」
「とにかく像と薬を押収するぞ」
まず薬がどんな形状か調べないとな。粉なのかカプセルなのか液体か。いずれにせよ販売できるレベルで量産されていることは間違いないだろう。
「殺されていた人間もいるが、そいつらが感染者同士で潰しあった可能性もある。正直学生の手に負える案件じゃないだろ。学園側に緊急報告も入れよう」
当然だが、国の運営をすることが試験である。さらに常識だが、外部からの国家レベルでピンチになる組織だった案件や、神々の暗躍などは運営に通報するのだ。普通に解決無理だろ。
「国王様ー! とりあえず像っぽいの集めてきましたぜ!」
仕事が速いね。給料見直そうかな。ちゃんと手袋をつけて慎重に扱っているところが、地味にポイント高いぞ。
「じゃあ撤収。学園の本職に任せるぞ」
「よーし! お前らてっしゅー!!」
そんなわけで退散してラウル先生の元へ。事情が事情なので、俺とフランとイズミだけだ。手の空いているやつで勇者科を連れてきた。
「やれやれ早速ですか……しかも複数のブロックであるみたいなんですよ」
「うちだけを狙っているわけではないのですね」
「ええ、流石は勇者科というところでしょうか」
先生の顔に多少だが疲労の色が見える。学園の教師でも疲れるんだな、なんて考えながら事態を収拾すべく相談に入る。
「4,7,8ブロックから報告が来ています」
「左側のブロックに偏っている? けど船が来たのは9ブロックからでしたよ?」
「全ブロックに仕掛けていくつもりなのかな? けれど学園の中では同じ事例がないんだよ。国外ではいくつかあるけれど」
「9個のブロックだけにばらまいている? そんなもん小さい国とか紛争地域とか、学園外で売ればいいのに」
「そうだね。強化兵士を作りたいなら、それが一番いい。だから目的がわからない」
薬を売るならゆるい国、学園外の国へ行って試すのが効率的だろう。戦争やっている国は高く買うはず。実験にしてもおかしい。いくら学生が国を運営していると言っても、ここは学園の敷地内。下手すりゃ超人と神が動く。リスクでかすぎるんだ。
「イベントじゃないんですよね?」
「違うよ。流石に薬物使ってかき回すのはやりすぎだ」
「拠点があると推測」
怪しい商人と像についても話すが、完全に白の可能性もあるので、ほどほどにと付け加えた。
「学園から研究の費用が出る。各ブロックで共有されるはずだから、薬の正体くらいはつかめるはずだよ」
「その費用ってやつで、船は作れますか?」
憤りはない。正義の心というやつは持ったことがない。だが今回でよくわかった。8ブロックはなめられている。どこかのクズに。
「囮になろうというのかい?」
「少し不思議。アジュはそういうタイプに見えない」
「別に好き好んでやるわけじゃない。他のブロックがどうだろうが興味もない。だが俺の邪魔をするなら潰しておかなければならない。少なくとも、8ブロックで怪しい薬を売ると死ぬ。この認識だけは全員に叩き込む必要がある」
4ブロックはカグラ陣営。つまりイロハがいる。他にも出回るかもしれない。無駄な手間があいつらにかかる。気に入らんな。
「なるほど。船は新品を?」
「正しくは内部を俺と罠だらけにした捕獲船です。ネズミ捕りのような船を作るんですよ。旧型を改造してもいい」
「危険よ! どれだけ敵がいるかもわからないのよ!」
「俺は事情が特殊だから問題ない」
俺なら確実に殺しきれるはず。多分だけど。薬が通用しないメンバーを集めないといけないし、試験の途中なのが問題だな。
「アジュくんが何か隠しているのは知っているわ。けど油断はダメ。国王が囮になっている状況はおかしいわ」
「アジュなら問題はないと判断。私が護衛役としてフォローに入る。一緒にお風呂にも入る。この命にかけて」
「フォローと風呂をかけているのに命までかけるな」
「そのやりとり全部いらないわよ」
話が脱線したけど、学園の部隊が囮になるので、学生は試験に集中してくださいとのことだった。そりゃそうなんだけどさ。その試験に影響出るんだよなあ。迷惑な敵だよ。先生は申し訳無さそうにしていたが、先生に責任はないので責めるつもりはない。お願いしますと言って部屋を出た。
「国王様に報告!」
伝令さんが急いでこちらに来た。薬の件で進展でもあったのだろうか。
「9ブロックが攻めてきました!」
「このタイミングで!?」
いかんちょっとキレそう。
「アジュ、聞いて欲しい」
「どうした?」
「シモネタ以外でネタを振れるようになった私を褒めて欲しい」
「このタイミングで!?」
もうめんどくせえよこの状況。
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