オリジンとBODの終わり

 巨大化したオリジンを倒して戻ろう。


「それじゃあとっとと終わらせるぞ」


「待ってくれ、まずカムイを安全な場所に」


「もう回復して地上に置いてきた」


 こんなもんは光速移動と回復魔法でいい。命に別条はないし、リリアたちのところに預けてきた。


「いいかルシード。お前はコアをぶった斬ることだけ考えろ。そこまではオレらでやる」


「……わかった。頼んだぞ」


 ルシードの前に出てヴァンと並ぶ。こういうのも久しぶりだ。少し楽しいぞ。


「姿が変わろうが、お前たちの死の運命は変えられん!! ここで跡形もなく消え去るがいい!!」


「とりあえず足場ごといくぞ」


「いつものやつだな?」


 ヴァンと一緒に足場のさらに下へ移動した。

 床の一番下は雲の中にあった。さーて恒例行事いってみようか。


「はいせーの」


「イヤッハアアァァ!!」


 二人の拳が大気を震わせ、空中闘技場を宇宙へとぶち上げる。

 一気に全床板が崩壊して、オリジンの上半身だけが宇宙を漂っていた。


「ウオォォォ!? 何だこのパワーは!?」


 これで星に被害は出ない。今までのストレスを解消してやるぜ。


「信じられんパワーである。人間の領域ではないであるな」


「間違いない。あの時オレを助けてくれた、あの鎧の男だ!」


「いくぞ!」


「おう!!」


 巨大なコードとメタルな板で作られた腕が伸びてきた。

 今の俺たちなら、軽く殴れば消滅させられる。


「なっ何ぃ!?」


 そのまま無数に飛来する腕に乗り、超光速で本体まで駆け抜ける。


「小賢しい! 消えろおおおぉぉ!!」


 ビームを弾き、コードを切り、壁を殴り飛ばして先へ進む。

 あらゆる攻撃がスローに見える。紙くずのように散っていくオリジンの装甲は、最早なんら驚異ではない。


「それじゃあ一番手ヴァリス、いくぜ!!」


 黄金剣が赤く神々しい魔力で染まっていく。強烈な死の気配と生命エネルギーが混ざった、あの三人にしか出せない奥義だ。


「冥生炎爆斬!!」


 輝く大剣を横に振る。ただそれだけで、オリジンの肩から下が消え去った。


「ありえん! 再生……再生ができぬ!!」


「それじゃあ二番手いってみようか」


 オリジンの下へと潜り込み、必殺技キーを挿したら準備完了。


『シャイニングブラスター!』


 左手に集まる破壊の力が、オリジンの残った体を焼き尽くす。


『ゴウ、トゥ、ヘエエェェェル!!』


 宇宙を走る閃光は、ひび割れたオリジンのコアだけを残して消えていった。


「見せ場は残してやったぜ」


 人の頭くらいの球体だが、間違いなくコアだ。分厚く硬い素材で覆っておこうという策なのだろう。無駄なことを。


「感謝する。アーク、オールクリア最大出力!!」


「委細承知!」


 本日最高峰の輝きを見せるアークは、その迸る光の刃でオリジンコアを貫いた。


「完全に……消えてなくなれええええええぇぇぇぇ!!」


「ありえん……こんな力が……こんな……ぐああああぁぁぁ!!」


 オリジンは欠片も残さず消滅していった。長い一日だったな……この国どんだけトラブル繰り出してくるんだよ。


「おつかれさま~。みんながんばったわね~」


「下へ転送するわ。早く変身解きなさい」


 ヴァンから離れたソニアとクラリスが転送魔法を使ってくれる。


「助かるよ」


 三人とも解除して瞬時に転送。ギルメンたちの持つ場所へ。


「おっ、戻ってきたのじゃ」


 ここは特別観客席だな。関係者が集まっている。その中に最近よく見る顔があった。


「トールさん?」


「機関がこれほど大規模に動いては、流石に神も動く」


 どうやら数人の神が動いたらしい。そりゃそうか。調査も進んでいたのか、オリジンの研究とアジトが判明している。今は神の部隊がガサ入れ中だとか。


「なるほど。主催者のゴンザレスってのは?」


「シロだ。あいつは何も知らん」


「完全にお飾りよ。本人も達人ではあるけれど、共同開催を持ちかけたオリジンが裏で動いたの」


 なるほど。目立ちたがりっぽかったし、うまく隠れ蓑にしていたわけか。

 となると俺たちができることは今のところないな。


「じゃあ後はお任せします」


「こちらでしっかりと調べておこう」


 上級審に任せておけばいいだろう。それでダメならもう打つ手がないし。頑張ってください。


「わたしたちいつもこんな感じだね」


「どうして綺麗に終われないのかしら」


 俺も知りたいわそれ。まだ神話生物出ないだけましだけど、鎧使う事態になることがもう面倒だ。


「ほらほら、全員こっち来なさい。私とクラリスで回復するから」


「決勝戦がもうすぐよ~。ちゃ~んと休憩しておいてね~」


「あー……それなんだが」


 ヴァンが申し訳無さそうにしている。まあ俺とルシードも同じ気持ちだよ。


「もう戦うの無理」


 そんなこんながありまして。


『なんとなんと優勝は! 不戦勝でチーム古武術だー!!』


 はい終わり。おめでとうチーム古武術。やってられるか。

 無駄な戦闘させられて疲れた。そして飽きた。もう今日は戦わない。


『えー優勝コメントをどうぞ』


『納得いかねえええええええ!!』


 レグルスが吠えている。あいつ武人タイプだろうし、正々堂々と戦いたかったんだろう。そういやヒーローになりたいとか言っていたな。そりゃ納得いかんか。


「いいのかしらこれ……」


「カムイダウン。アークは修復が必要。ヴァンはマスクが破けた。俺は疲れたし飽きた。よし無理だな」


「後半の理由がひどい」


 正直これ以上目立つのはお断りだ。カムイ抜きで勝ったりした日には、それこそ面倒事が増える。ここで適当に終わっておこうぜマジで。


「すみません僕のせいで」


「そんな、カムイ様は素敵でしたわ」


「気にするな。いい口実ができた」


 目覚めたカムイが申し訳無さそうにしているが、こいつに罪はない。ぶっちゃけ出たくないのだ。


「そいつは言っちゃダメじゃねえかな?」


「とりあえず城に戻るんだろ?」


「そうですね。父に報告に行かないと」


「終わったらしばらく寝るか」


 休息が必要だ。もっとのんびりしてもいいはず。期末テストはこれで終わりだ。


「よし、ザトーさんに報告だ」


 というわけでささっと城に戻った。神の転送魔法は城の大きな部屋へ繋がっている。もしもの時はそこに飛ぶよう非常口的な感じで取り決めがあるのだ。


「おかえり。一応無事みたいだな」


「只今戻りました」


 ザトーさんと知らん神様や軍の偉い人っぽいのが出迎えてくれる。

 報告はカムイとトールさんがするので、俺は静かにしていよう。

 やがて大切な話が終わったのか、BOD本戦の話になっていく。


「いやしかし準優勝とは凄いじゃないの。カムイと組ませて正解だったな」


「みなさんに助けられました。僕だけでは勝ち残ることは難しかったと思います」


「そうだな。そうやってよく学びよく遊ぶ。その後はよく休む。皆大儀であった」


 おぉ、なんか皇帝っぽいオーラが出ている。フランクで忘れがちだが、この人も超人だからな。上から数えた方が早い位置にいる人だ。


「ソフィアに心配かけ過ぎなんだよ。しばらく看病でもしてもらいな」


「ちょっとヴァンさん!?」


「そうですわね。まだ心身ともにお疲れでしょう。何か回復に効くお料理でもお持ちいたしますわ」


「そうしてやってくれ。息子は素直でいいやつだが、どうもそっち方面には鈍くてな」


「父上!?」


 ザトー一家とソフィアのほのぼの劇場が開催されそうなので部屋に戻ろう。


「言い忘れていた。ルシードくん。これから少し協力してもらうかもしれないけれど」


「オレからもお願いするつもりでした。自分が何者なのか。この力が何なのか知りたい。それに、あんな悪がのさばっているのは我慢なりません」


「いい目だ。だが気負うなよ。死に繋がるぞ」


「肝に銘じておきます」


 これから管理機関とのごたごたがあるんだろうなあ。無関係を装うことにしよう。

 ザトーさんが小声でヴァンに話しかける。隣りにいるもんだから聞こえちまうわけだが。


「マクスウェル家もいつでも再興していいぞ。全力で支援する」


「ありがとうございます。ですが、オレはまだ自分の道を往きます」


「それもいい。学生のうちは自由にのびのびやるべきさ」


 本人たちは満足しているようだ。なら口を挟まない。これで会議は終わり。

 そんなわけで解散となった。色々あったがやっと落ち着ける。

 とりあえず飯にしよう。あとは食って寝てから考えればいいや。

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